クリームシチュー、ビール、夏至

金曜日の夜は父親の作ったクリームシチューを食べた。
それぞれの野菜がとても細かく、丁寧に切られていて、クリームシチュー以外の何でもない味がする。その几帳面さも、すでに肉はあらかたなくなっているところも、父さんらしいなと思いながら食べる。めかぶをすすめられ、それもありがたくいただいた。さらに深夜、ドアの外で呼ぶ声がして出て行くと、図書券をあげようといって図書カードをくれたりもした。長年の癖でつい身構えてしまうせいで、うまく礼を言えたか不安なのだけど、「不景気でボーナスでなかったりするかもしれないからね!」とさわやかに不穏なことを言い残していくのは相変わらず。

土曜日は、午後から友達に会って、近所を散歩した。会ってすぐにビールを飲み、歩いてまたビールを飲んだ。
ちょっとした不安がとりあえず晴れたせいか、体が軽くなってる単純さに笑う。言葉で考えることより、気分の方がずっと早くなじむのはなんでだろう。そういえば、『1Q84』に「理性と意志と情欲が討論したら誰が勝てそうにないか想像つく」って台詞がでてきて、私には誰が勝てそうにないか想像がつかなかったのだけど、とりあえず一番遅いのは考えることに近い理性のような気がした。でも最後に残るのは意志のような気もするし、結局誰が勝てそうにないのかはほんとうにわからない。
わからないことだらけで、ビール越しにとりとめのない話をする。心配なことはたくさんあるんだけど、でも、こんな話ができるようになったことを嬉しく思ったりもする。

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日曜日は朝から大雨の中、大荷物抱えて新幹線に乗って友達の結婚式へ。
彼女はほんとうに、たくさん苦労してきた人だけど、そういうのぜんぶくるんで安心できるような1日だった。数年前に会ったことがある弟さんが、すっかり大人になっていて、兄弟のことに弱いせいかつい、自分の弟や妹のことを思ってまた涙腺がゆるむ。午後になって雨が晴れると、濡れた緑の隙間からいっせいにセミの声が降ってきて、ちゃんと夏はくるんだなと思う。
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これから先、彼女の顔を思い出すときは、きっと今日の顔だろう。帰宅して、いただいた花を生けなおしながら、そんなことを思った。