「かの人や月」1〜3巻/いくえみ綾

かの人や月 1 (マーガレットコミックス)

かの人や月 1 (マーガレットコミックス)

潔く柔く」がとても面白くって、という話をしてたのをきっかけに貸していただきました。
で、これがまたすごくよかった。勢いでいくえみ綾さんの漫画集めそうなってたとこに、だいたいこーんくらいだよ、と教えてもらった両手の幅を見て、うちにはあきらかに場所がないなと思い直していたんだけど、でも、これは何度も読みたいのでやっぱり買おうと思います。
「かの人や月」は、三世代が同居する羽上家の長男、長女、次女の3人の視点を中心に描かれるお話。「潔く柔く」もだけど、いくえみ綾さんはこういう複数視点の連作短編がほんとうまい人なんだなあと思う。これまでに読んだ作品には、正直どことなくしっくりこないなと思うこともあったんだけど、この語り口の雰囲気をいちど好きになってしまえば、あとは芋づる式なのかもしれない。
このお話の主人公となる、顕、ひろの、ほのか、それぞれの視点で描かれるのは、あくまでも個々の抱えてる問題についてなのだけど、そうやって幾度も重なるうちに、各キャラクターに奥行きが出てくるように感じる。これは群像もののいいとこだよなーと思います。
そして終盤、外側から羽上家を見た人物が、「玄関に並んで見送ってくれるじゃないですか、あれがすごく好きです」って言う場面でぐっとまとまる感じがするのは(そしてそれが1巻の表紙にちゃんと描かれているのは)、やっぱり構成がうまいからなのかなあとか思いました。よかった。
特に好きだったのは(複雑な気分ではあるんだけど)やっぱり、長男の顕でした。ひどいなー! て思う場面もたくさんあるんだけど(って確認のために見返してみてもほんとひどいなーって思うんだけど)それ以上に、この率直さが好きだなあと思う。とくに最終話がとてもよかったです。
かの人や月 3 (マーガレットコミックス)

かの人や月 3 (マーガレットコミックス)