目印

本屋さんに行って、新刊が並んだ平台を見るのが好きだ。
特に新刊がたくさん出ている時期に、どれを買おうか悩んで、買った本を読み始めてわくわくしているときほど、あの平台の前に立っていた瞬間が特別なものに思える。

「SOSの猿」を買う少し前、以前書きおこした三島由紀夫のインタビュー文(id:ichinics:20060723:p1)を読みかえしていた。それも「砂漠」がらみで書いたことだったのだけど、当時はいまひとつ納得できなかったあの言葉が、なんとなく頭に残っていたところで、「SOSの猿」を手に取り、三島由紀夫の言う「大義」とは、たぶんここにある「困っている人を助けなきゃ」という思いに似たところがあるんじゃないだろうか、とか思いながら読み始めたんだった。

自分にもそういう思いがあるとは言わないけれど、なんとなく、何かをチャラにしなきゃいけないような気持ちはあって、それってずるいよなあとか、くよくよすることもたまにある。それがちょうどよみがえってきたところで、この「SOSの猿」の、特にラスト数ページを読めたのは良かった。
別に何も解決はしないのだけど、少し前に目印を投げるような気分で、読み終わったのは帰り道の、電車の中だった。