顔をなくしたニンニ

小さい頃、よくスライドでムーミンを見た。カセットテープかけて、タイミングごとに絵を切り替えていくやつ。たぶん壁に映してたんだろうけど、うちのどこにそんな大きな壁があったのか今となってはよくわからない。
親の仕事の関係でもらったものだったせいか、スライドは1話ぶんしかなくて、しかもお話の途中までだった。それでも、いくつかの場面については、岸田今日子さんの声とともに、今でもはっきりと覚えている。オープニングの音からしてちょっとこわいのとか。
「顔をなくしたニンニ」は、ムーミンの家に「ニンニ」という女の子がやってくるところからはじまる。
ニンニの姿は誰にも見えない。彼女は一緒に暮らしていたおばさんからいじわるされて、だんだんと姿が見えなくなってしまったのだ。そのため、ムーミンの家にやってきた時は、首にかけた鈴だけが彼女の存在を知らせるものだった。
しかしムーミンたちにやさしくしてもらうことで、ニンニは少しずつ姿を取り戻していく、というお話。
食事をしながら、「たのしいってなんのことですか」「うれしいってなんですか」って言うところとか、今思うとちょっと綾波っぽい。スライドはたしかそのへんまでで終わっていて、なんだかすごくかなしい話だったなと思っていた。

そんなことを思い出したので、あらすじを検索してみたところ、ニンニがその後ちゃんと顔をとりもどしたことがわかってほっとした(平成版と私が見てた旧版を比べるとおちがだいぶちがっててそれはそれで笑う)。そして、きっかけはムーミン一家のやさしさであっても、顔を取り戻すきっかけになるのは、彼女自身の気持ちってところはさすがヤンソンさんだなと思ったりした。
まあニンニのようにつらいことがあったわけじゃなくても、たまに消えてるような気分になることはあって、例えば最近、インフルエンザになったりしたので一週間くらいずっとマスクしてたんだけど、マスクしてると楽なのは人から顔見られないからなのかなーとか思ったりした。スクランブルスーツっぽいですね。話がずれた。