雪の日

「東京の天気、今は晴れていますが、夜からは雪になりますよ」などとテレビが言うのを横目に、一応洗濯物をとりこんで、でも傘はもたずに家をでる。
昼を過ぎた頃からどんどん空が白くなって、会社を出たときは小雨だったのに、地元の駅に着く頃には、すっかり雪に変わっていた。
ついこの間、この冬はもう雪とか降らないかもねえ、なんて話をしてたばかりなのにな、なんて思いながら、あまりの寒さにいったん喫茶店に避難する。家に帰るにも、なんとなく助走がいる。
結局傘は買わずに帰ったので、家につく頃には黒いコートが真っ白になっていた。

翌朝はやけに明るくて、窓を開けたら隣の家の屋根もその向こうの屋根も真っ白に覆われていた。いくつか足跡をつけながら駅に向かい、いつもより少し早い電車に乗る。
中学受験らしき親子をちらほらと見かけて、そういえば、私が中学受験したときも雪だったなと思い出す。朝受験会場に行くと、塾の先生が来ていて、落ち着いてな、とか言われたのが嬉しかったのを覚えている。今思えば、塾ってそういうものなのかもしれないけど、あの時は、見知った顔があるだけで、ずいぶんほっとした。
そういうものに、私はなりたい、とか思いながら窓の外の雪景色を眺める。外が白くて、どっちに向かってるんだか、よくわからなくなる。