「熱病加速装置」「あねおと」/元町夏央

熱病加速装置

熱病加速装置

あねおと 1 (アクションコミックス)

あねおと 1 (アクションコミックス)

元町夏央さんの作品を初めて読んだのは昨年末に出た、「熱病加速装置」という短編集でした。その後に出た、「あねおと」という作品の1巻を(新井英樹さんが帯文を書いていた)読んで、ああこれは「熱病加速装置」の延長線上にある連載なんだなーと思い、なんとなくまた「熱病加速装置」を読みかえしたのだけど、
この人の作品は、なんとなく、こわいなと思うところがあって、それは何でなのか気になっていた。
たぶん、最初に読んだ「熱病加速装置」の冒頭に収録されている『てんねんかじつ』のイメージだと思うのだけど、この人の描く、感情があらわになる瞬間っていうのは、なんだか熟しきった果物みたいな、ちょっとべたべたした感じがある。その印象は比古地朔弥さんの「まひるの海」を読んだときの感覚とちょっと似てるんだけど、「まひるの海」を読んだのは連載当時のことなのでちょっとよく覚えてない。
ただ個人的に、思春期のリビドーが、報われて(?)しまう場面というのが、苦手なのかもしれないなあと思った。リビドーって。って感じですが、ちょっと他の例を考えてみたいと思います。

『てんねんかじつ』は両親の再婚によって姉弟となった2人の関係を描いたものなのだけど、「あねおと」もまた、事情は違えど、一つ屋根の下に暮らすことになった女の子と男の子のお話なので、たぶんこれは作者のこだわっているテーマのひとつなんだろうなと思います。
「あねおと」は連載作品だからか、足取りがゆるやかで、『てんねんかじつ』よりは読みやすい。同時に、バランスがとれてしまったようなさみしさもあるのだけど、死を間近に感じる印象的な場面がいくつかあって、やっぱり独特の漫画を描く人だなと思いました。

これまで読んだこの人の作品の中では「熱病加速装置」に収録されている「橙」が一番好きだ。8歳の女の子が主人公のお話で、離れて暮らすことになった父親と久しぶりに会った1日を描きながら、彼女が考えていることが、その表情や視線から染み出すようで切ない。特に、その1日の終わりに、迎えに来た母親の横を歩く場面がとてもいいです。