「平成マンガ家実存物語おはようひで次くん!」/小田ひで次

講談社ウェブマガジン「Michao!」で2006年から連載されていた作品。エンターブレインから単行本ででたときいたので買って読んだ。たしか、この連載開始を知ったのは、黒田硫黄さんのファンサイトでのことだったなーと思い、そのサイトを探してみたけど、もう見つけられなくなっていた…。インターネットの4年てほんと早い…。
「おはようひで次くん!」は、そのタイトル通り、主人公が作者自身のエッセイ漫画なのだけど、この1巻ではまだそのエッセイ漫画を描きはじめるところまでいかない。いかなくて思わず笑ってしまった。設定なども、大部分はフィクションとのことですが、それでも作者のこだわりとか意識とかは、ほんとうなんだろうなーと思う。人はほんとうのことを言うために、作り話をするんだっていうしな。*1
小田ひで次さんの漫画は、四季賞のデビュー作から読んでいて、最初の単行本「拡散」がでたときのこともよく覚えている。絵も、お話も独特で、誰かの夢の中のような作品を描く人だと思った。
けれど「夢の空地」(http://d.hatena.ne.jp/ichinics/20051027/p1)あたりでなんかすごく迷っている感じはあって、この「おはようひで次くん!」を読むのは、そのとき感じたことの裏地に触れるみたいだった。
ただ、この「おはようひで次くん!」は、これまでの小田ひで次作品を読んできた人にとってはもちろん、小田ひで次さんの作品を読むのはこれが初めてって人にも面白い作品だと思う。 twitter でもちょくちょく感想を見かけます。
ただ、個人的にはこの「おはようひで次くん!」は、漫画家の拘泥を描いたエッセイ(というとぱっと思いつくのは、いましろたかしの「グチ文学 気に病む」*2)というよりは、むしろ漫画家が主人公の日常漫画みたいだなと思いました。姉妹や、編集の人や、ひで爺自身の自信など、受け皿がちゃんとあるので安心して読める。「夢の空地」の読後感がわりとしんどかったので、あの後にこれがあってよかったと思った。
毎日風呂に入りながら、ちょっとずつ読むのが楽しかったです。
とりあえず、続きは数年後、とかにならなければいいなー。

*1:ということが、『ビッチマグネット』にも書いてあったのを思い出す

*2:http://d.hatena.ne.jp/ichinics/20080516/p1