「野ばら」/高田築

本屋さんで見かけて表紙買い。初めて読む漫画家さんなのですが、とても気に入りました。
収録されているどの短編も、すこしふしぎSFで好みなうえに、語り口のテンポも、安定した絵柄も、最後の1ページまでどうなるかわからない展開も、とにかくうまいなあと思う。
描く物語に特徴はあるけど、いろんなジャンルの物語を描けそうな人でもあって、それは絵と物語の間に少し距離があるからなんだろうなと思う。距離というか、コメディもサスペンスも描ける絵柄で、力の入れ方、抜き方がうまい。
大友克洋福山庸治黒田硫黄石黒正数…など、読みながら思い浮かべた漫画家も様々なんだけど、その上で「この人の漫画」がもっと読みたくなる、とても魅力的な漫画家さんだと思いました。

野ばら 1巻 (ビームコミックス)

野ばら 1巻 (ビームコミックス)

  • 1〜3話は「しょむたん」という謎の生き物(「いちにのさんすう」のタップ君にちょっと似ている)とお姉さんシリーズ。しょむたんは喋らないけど人語を理解するし、ラブ○ラスみたいなゲームもやってる。お姉さんとのやりとりが面白いです。
  • 「こっちを見てる」という短編は、最後までどうなるかわからなかった。福山庸治さんを思い浮かべたのはこの話なのですが、やーやられた。しょむたん読んでこれがくるとは思わないよね。
  • 「秘密のジュンジュン」は近未来の警察物語。交通課につとめる主人公がなんでおとり捜査やってるのかよくわからないけど、家政婦として潜入捜査するのに、家政婦マニュアルをインストールしてたりする(そして途中でやめたりする)冒頭からわくわくした。小道具もお色気シーンもとても面白かったので、シリーズで読みたいなーと思った。
  • 「男やもめ・チャイナパンツ」は短いお話ですが大好き。これいーなー。全然話違うけど「老人Z」思い出した。
  • 「くるくるとGPS」は少年と少女のささやかな超能力物語。最高です。この1作品だけでもこの漫画家さんを好きになったと思うけど、ここまで収録されてる作品とは全然イメージが違うのに、この引き出しもあるのかーっていう驚きになんだか嬉しくなりました。ラストの見開きがとてもいいです。


とにかく今後がとても楽しみな漫画家さんです。わくわくするな!