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 「カラフル」

監督:原恵一
原恵一監督で、原作が森絵都さん、ときたら、これはぜひ見ないと! と思いたって初日に行って来ました。

とある「罪」を犯して亡くなった主人公が、「小林真」という自殺したばかりの少年として生き返り、自分の犯した罪を思い出す、という「再挑戦」をする物語。
「小林真」の置かれた環境は厳しいものなのだけど、所詮他人事、と、主人公は気の赴くままに行動し、やがてそのなかに「自分」の気持ちを見つけていく。

原作は児童文学の中でもいわゆるヤングアダルトというジャンルになると思うのだけど(今もヤングアダルトっていうのかな)、この映画も、あくまでも思春期の子どもに向けて作られたものだと思います。もちろん、大人が見ても面白い作品ではあると思うのだけど、自分が誰かにおすすめするとしたら、人を選ぶなあと思いました。
というのも、「気持ち」を描くことに丁寧な映画だけに、画面はたんたんとしていて、私自身、最初はなぜこれをアニメでやろうと思ったんだろう、と疑問に思いながら見ていたからです。
しかし、だんだんと、このキャラクターたちを「実写」で見ていたら、私はきっと役者を通して見てしまっただろうとも思った。知っている役者さんでなくても、それが実写であるというだけで、限定されるイメージがある。
この映画の場合は、それが「絵」だからこそ余白があるというか、登場人物の誰かに、自分を重ねることがしやすいのではないかと思いました。
アニメーションというとつい、実写ではできない表現やキャラクター描写などを期待してしまったりもするけれど、このような余白を描くこともできるのだなと、改めて気付かされた思いです。
そして、さりげない伏線のうまさというか、感情が一本ではなく様々な出来事に影響されていて、「言葉」の背景に広がりをもたせるという描き方は、やはり原作のよさだろうなとも思う。特にあのコンビニの前のシーンはとても印象的で、彼が笑うたびに、たぶん主人公と同じように、私まで心強い気持ちになった。
終盤まで、あんまり好きになれなかった「天使」の存在にも、最後にはなるほどと思えたのもよかった。

「他人」として生きてみることで、世界の見え方が変わり、そのうえで変わらないことが浮かんでくる。構成は異なるけれど、物語のテーマとしては、大島弓子さんの「秋日子かく語りき」に似ているなと思った。
ちょっと展開が遅いのと、音に違和感を感じる場面が多く(特にモノローグと台詞の切り替えがいまいちわかりづらかった)正直、集中力の切れてしまったところもあった。でも見終わる頃には、素直によかった、と思っていた。
声優ではだんとつに宮崎あおいさんが良くて、彼女の役は主人公と同じく「いじめられっ子」の女の子なのだけど、ああこういう喋り方の子いたよなあと思ったりした。そして、彼女の起用にも「秋日子かく語りき」を思い出したりした。
上映が終わり、同じ回を見ていた高校生くらいの男の子が、泣きながら「子どもがうまれたら絶対見せる」って言っていたのが印象的でした。

余談ですが、あるシーンでお兄ちゃんのメガネが曇っていたのに、泣きながら笑いそうになってしまいました。描写が細かい。
あと、個人的に馴染み深い風景がたくさんでてきたのも嬉しかったです。