「高杉さん家のおべんとう」1巻/柳原望

あちこちでおすすめされているのを見て気になっていた作品。やっと1巻を読んだのですが、とても好きな雰囲気のお話でした。「女の子の食卓」や「きのう何食べた?」などの作品が好きな人にはとくにおすすめしたい、食べること漫画でもある。

高杉さん家のおべんとう 1

高杉さん家のおべんとう 1

主人公(高杉)は、失踪していた叔母の遺言により、年の離れた従妹(久留里)とともに暮らすことになる。初対面なうえに、30代と中学生、という親子とも兄妹ともつかない年の差に戸惑いつつ、「おべんとう」を通して徐々にお互いのことを理解していく様子がとてもかわいい作品です。2人のまわりにいる人たちもキャラクターがはっきりしていて、今後いろんな展開が期待できそう。

久留里は中学生ながら、スーパーの特売が好きな買い物上手。急な来客に冷蔵庫の中を漁られるシーンで、「明日使うつもりだったナス 週末にシチューを作るつもりでとっておいたニンジンとカボチャ…」なんて涙目になっているのにはちょっと笑ってしまったけれど、自分も1人暮らしをはじめてまず感激したのが、冷蔵庫の中身を全て把握している万能感だったので、なんとなく親近感を覚えました。
1巻で特にぐっときたのは第5話。落ち込んでいた主人公が、晩ご飯を作る段になって、ふと「お弁当に入れるならにんにく入れるのやめようか」と言う、その自分の言葉から、こんな風に思い至るシーン。

1年先、2年先はわからないけれど
少なくとも明日の昼飯は何とかできる
考えて工夫して充実させることができる
ほんの少し未来を作ることができるのなら
その先も そのほんの少し先も
その先も
きっと何かできることはある
第5話「おべんとうの時間軸」

下に書いたこうの史代さんの「平凡倶楽部」を読んでも感じたことだけど、そんな風に、献立を考えるのは、ほんの少しずつ、手の届く範囲で毎日を重ねていくことなんだなと思う。
いま3巻まででているらしいので、続きを読むのがとても楽しみです。