「オー!ファーザー」/伊坂幸太郎

オー!ファーザー

オー!ファーザー

読んでいる間、なんだか昔の伊坂幸太郎作品のようだなという印象があって、あとがきを読んで納得した。これは2006年から2007年にかけて新聞連載された作品で、作者自身がこの後に書かれた「『ゴールデンスランパー』からが第二期と呼べるのかもしれません」と書いていました。
個人的には、伊坂幸太郎さんは出版社ごとに少しイメージの異なる作品を描きわけているように感じていて、おおまかに言えば新潮社とそれ以外、で、この『オー!ファーザー』からは、新潮社から出ている作品群と似た印象を受けました。
ただ、いくつかの伏線とともに最後に大きな事件が起きて、意外な解決を見せる、という展開自体はさすがなのだけど、その真ん中にあるものが薄れているような気はして、書かれた時期的にはこのひとつ前の「フィッシュストーリー」*1を読んだときに似た、次の一手に行きそうで行かないもどかしさを感じる作品でした。

「オー!ファーザー」の主人公には4人の父親がいる。彼らはそれぞれに魅力的な父親であり、主人公をかわいがっていて、それはなかなか楽しい生活のようにも思えるのだけど、肝心の主人公については、最後までよくわからないままだった。
同級生の女の子が彼にあれこれ要求をすることも、友人の巻き込まれたトラブルに巻き込まれることも、主人公は文句をいいつつ受け入れていく。でもそれは、あの4人の父親に育てられたからこその性格というわけではないような気がしたし、父親たちとの関係も最初から最後まで、あんまり変わらないように思えた。

個人的には、伊坂幸太郎さんの「終末のフール」までの作品がとても好きで、「第二期」とされる作品は(あまり読んでいないのもあるけれど)文章は楽しいし読みやすいんだけど、いまひとつ勢いが足りない気がする、というのが正直な感想です。でもまだ読みたいし、きっとまたすごく好きな作品がでてくると思ってる。なんてことを思いながら読み終わりました。

あと帯を見た段階では、4人いると思ってるけど実は1人だったりして、とか思ってたんだけどそういう話ではなかった。