ブラック・スワン

監督:ダーレン・アロノフスキー

こわかったけど面白かったです。
白鳥の湖」の主役に抜擢されたバレエダンサー、ニナが自身の壁を打ち破るために、やがて狂気に囚われていく物語。
振付師に「白鳥としては完璧」と称されるニナは、臆病で、悲劇のヒロインのような儚さがある。しかし、主役に抜擢されたからには「黒鳥」にもならなければいけない。王子を誘惑する側にまわらなくてはいけないのだけど、現実の彼女は過保護な母親のもとでぬいぐるみに囲まれた部屋に暮らしている。冒頭からずっと白系の衣装を身につけ、常におびえているような表情をしている。
そのような演出によって、確かにニナは「黒鳥」にむいてないよね…、と、つい納得してしまうところがまず面白いなと思いました。。
振付師が彼女の控えに選んだのは、奔放で明るく、ニナとはまったく正反対のダンサー。見ていると、そりゃ彼女の方が黒鳥に向いているよなーと感じてしまう。だからこそ、クライマックスでそれをどうねじ伏せるのかを見たくなってしまうのだけど、その期待にばっちり応えてくれた映画だったと思います。「白鳥の湖」の物語と重ねた人物配置で描かれ、物語の顛末も重ねて読めるのがいい。
物語自体はわりと予想のつく「定番」の展開ながら、どこまでが現実かわからないニナの視点を通して描かれることで、常に続きが気になって面白かった。
娘を束縛する母親の存在に「パーフェクトブルー」を思い出したり、様々なバレエ漫画を思い浮かべたりするのも楽しかったです。こわかったけど!