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 「イリュージョニスト」


ベルヴィル・ランデブー」の監督、シルヴァン・ショメの新作。ジャック・タチの未映画化のシナリオをアニメーションで描いた作品です。
物語の主人公は、あちこちの劇場を回っている手品師のおじいさん、タチシェフ。彼がある日訪れた異国の島で出会った少女は、彼のことを魔法使いだと信じこみ、彼が島を離れる際についてきてしまう。そして言葉も通じないままに2人で暮らす日々のお話。手品や大道芸のシーンがとても面白いのに物悲しく、「ベルヴィル・ランデブー」の原点はこのような芸への愛着にあったのかもしれないなと思う。
シルヴァン・ショメ監督のアニメーションは、懐かしい色合いで、光の色がとてもきれいだなと思います。台詞はほとんどなく、動きでキャラクターを描き出していく手法は「ヴェルヴィル」と同じ。今回はタチシェフや他の芸人の人々のどこかぎこちない動きと、少女のなめらかな動きの対比が印象的でした。特にスカートの描き方がディズニーっぽい(アリスだし)のがよかったな。
ただ物語についてはかなりもやもやしたものが残ってしまいました。少女が、言葉の通じないタチシェフを魔法使いとして扱うということは、つまり同じ人間としては接していないということに近くて、それがどうしても理不尽に感じられてしまった。それでもタチシェフはそこにとどまろうとする、というのがひたすら切なく、せめてひと言ほしかったなと思いました。