スイッチ

本を読んだり映画を見たり音楽を聴いたりすることは、ご飯を食べるのと同じように、今日は揚げ物とか、生野菜がいいとか、濃い味薄い味、その日の気分に影響されやすいものだと思う。
iPhoneで音楽を聴くときも、気分にあわせてだいたい週1の割合でプレイリストを作ってそればかり聞いている。でもそうすると、長らく聞いていない曲の方が多くなっていくし、かと思えば夏が近づいたら必ず入れる定番曲やプレイリストに入れっぱなしの曲もあって、もしかすると、好きな曲はあまり増えていないのかもしれない、と考えることもある。
それでも、新しいアルバムを買ったらしばらくはそればかり聴いているし、聴いているうちに、その中のある曲にスイッチが入る感じがすごく好きだ。
それは、人の顔を覚えたり、そのひとの癖に気づいたり、好意をもったりすることに似ている。わくわくして何度も聞きたくなって、いつかある気持ちのスイッチの定番曲になる。そういう曲に出会いたくて、CDを買っているような気がする。

最近買ったもので気に入って聞いてるのはキセルのレアトラック集「SUKIMA MUSICS」。シングルのB面曲やコンピレーションに収録されていた曲などを集めたアルバムなのですが、中でも特に好きなのがカバー曲である細野晴臣の「四面道歌」、高田渡の「系図」「鮪と鰯」、童謡の「かなりや」です。どの曲も、オリジナル曲と同じくらいキセルの曲になっていて、それは編曲だけでなく歌詞についてもキセルらしい、と言ってしまいたくなるものを選んでいるからだと思う。
その曲がはじまると、何か居心地のよい乗り物で遠くに帰るような気分になる。空はまだ明るくて、窓をあけると緑色のにおいがする。ちょっとうとうとしているときのような、安心のスイッチみたいだ。

SUKIMA MUSICS

SUKIMA MUSICS