「地上はポケットの中の庭」/田中相

表紙買いをした新刊。なのですが、いざ読み始めてみたらコミティアで本を買ったことある方でした。特に1話めに収録されている短編は、とても気に入っていたお話だったので嬉しかった。今後の活躍が楽しみです。

地上はポケットの中の庭 (KCx)

地上はポケットの中の庭 (KCx)

この本は「庭」をテーマにした短編集。作者の描く風景はとても素敵で、特に植物や虫の絵は幼いころによんだ子ども向けの図鑑のようだなとも思う。細かく描き込まれた背景と白のとり方のバランスがとても気持ちいいです。
お話もとても好き。既読だった「5月の庭」はちょっと「家守綺譚」を思わせるような少しふしぎが大好物です。表題作は、主人公がこれまでの人生を思い返す場面のお話なのだけど、それが「時間」についてのお話としてまとめられているところにぐっときて、私はこの作者が好きだなと思いました。
他にも王様と庭師の友情のお話や友情もの将棋のお話、などなど、バラエティに富んでいるのに本全体から夏っぽいにおいがしそうなすてきな本です。
あとがきやカバー裏の作品解説の書き込みも楽しいです。福音館書店の「冒険図鑑」「自然図鑑」が好きだった人には特におすすめしたい雰囲気です。