女王様ナナカ/原作:大槻ケンヂ 漫画:西炯子

女王様ナナカ 新装版 (リュウコミックス)

女王様ナナカ 新装版 (リュウコミックス)

最近、西炯子さんの漫画はちょっと苦手かもな…と思う事が続いていたのですが、この「女王様ナナカ」はとても良かったです。
SMクラブの女王様、ナナカを主人公に描かれる3つのお話を集めた短篇集。とはいえ、物語の中心になるのは彼女のもとを訪れるお客さんです。
この漫画では、SMプレイがこのようなものとして描かれます。

人って制約に縛られて生きてるじゃない
全然別の人格になったりってできないじゃない
(略)
その社会的に不可能な願望を束の間叶えてあげるのよ

ナナカが女王様として客に本気で向かい合うことが、客の「なりたいもの」を見つけ出す手助けとなって機能するというお話の組み立方がとてもいい。

特に2話め「ナスターシャ」は名作だと思います。
容姿にコンプレックスがあり、「別人になりたい」という願いを絵本を描くことで慰めていた女の子の物語。彼女のかすかな希望が打ち砕かれ、ナナカがその絶望を越えるための手助けをする場面はとてもよかった。同じテーマの名作といえば「接続された女*1など様々あるけれど、この「ナスターシャ」での決着の付け方はとても個人的であるというところが大槻ケンヂらしさなのではないか、と思ったりしました。
ナナカの役割は、あくまでも個人の中に深く潜ることに「つきあう」だけにとどまっているのがいい。

1、2話めはかなり昔の作品のようで絵柄が古いのだけど、それがまたいいです。3話めは完全に今の絵柄になっていて、しかも「ナナカ」のお話に近くなっているところが別の作品になってしまったみたいでちょっと残念でした。