コンテイジョン

監督:スティーヴン・ソダーバーグ

原因不明の感染症が世界中に広がっていく過程を様々な立場の視点から描いた物語。
被害者の夫、医師、感染症の研究者など、それぞれの視点が切実で、とても冷静な映画だなと思いました。感染パニック映画にするなら煽る方法はいくらでもあったと思うのですが、この映画はあえて「パニック映画」にはしていないのだと思う。パニックになっている部分も、懸命に頑張っている人々の部分も、理不尽さも、全部平等にフラットに描かれている。だからこそ、目に見えないウイルスが広がっていくにつれ、人と人とのやりとりや情報が、感染の恐怖や物理的な距離によってつながらなくなっていく様子が、じわじわと恐ろしく感じられました。
そしてふと、映画は途中で終わらない、ということは映画を見る人の視点は映画の終わり以降に連れて行かれることが約束されているのだなということに気づき、なんとも言えない気分になった。

映画の中で豚インフルエンザ(日本では新型インフルエンザと呼ばれていたものだと思う)について何度か「あの時は大騒ぎしすぎた」というような表現をされているところがあった。確か日本でも最近そのような表現を見たことがあるけれども、だからといってその一言でまとめられるようなことではないんだよな、ということを忘れてはいけないのだと思う。
自分が群像劇を好きなのは、人にはみんな事情がありそれぞれ考え方が違うということを、再確認できるからのように思う。