おでん

Sから「メールアドレス変わりました」というメールが来て、懐かしくてすぐ返信をすると、彼はいつのまにかお坊さんになっており、しかも今は東京にいて、さらにもうすぐ婿入りで地方へ越す、という返事がきたので、当時の友人4人と、主に仏滅大安を避ける方向で都合をつけて飲みに行った。
待ち合わせは新宿の、年季の入ったおでん屋さんだった。時間通りに全員が集まるなんてたぶん初めてのことで、みんな大人になった、って時期も通り越したなという気分になる。
Sとは彼が京都に住んでいた6年前、別の友達と一緒に遊びに行った時に会ったのが最後だった。その頃はお互いにもうちょっと若かったし、思い返せば彼はいつもにやけてた気がするんだけど、婿入り先の地方の風習とか、彼女やその家族について語る彼の笑顔はなんだか柔らかくて、とても楽しそうだったし、私たちもたくさん笑った。
例えば出汁をたっぷり含んだおでんの大根みたいに、隅々までいい気分の夜で、歳をとるって悪くないものだな、と思った。

別れ際、携帯の自撮りで集合写真をとるとか、そんなことしたのは大学の卒業式以来だった。「その写真送ってね」と言って別れ、それぞれが電車に乗った頃合にメールが届いた。先ほどの、ゆるんだ私たちの写真とともに、そこには「なんだかすごく幸せな夜だった」と書いてあって、私は家についてもまだ、にやけていたと思う。