アーティスト

監督:ミシェル・アザナヴィシウス

サイレントからトーキー映画へと移り変わる時代の流れの中で描かれる、サイレント映画のトップスターと、駆け出しの新人女優の物語。
サイレント映画のスタイルで描かれているため、冒頭は眠気との戦いでしたが物語が動き出してからは楽しく見ることができました。
【以下内容に触れています】
物語としてはとても単純で、サイレント映画のスター、ジョージが時代の流れの中でサイレントにこだわることでスターの座を追われ、対照的に無名の新人女優であったペピーが一躍時代の寵児となるという光と影の物語です。
視線や動作の雄弁さだとか、それによって台詞が脳内補完できることの楽しさとか、サイレントの魅力が伝わってくるのがこの映画のいいところだと思いました。
ただ対照的に、物語でサイレント映画は終わりゆくものなんですよね。そこにちょっと矛盾を感じてしまいました。ジョージはプライドが高いためにトーキーを受け入れられなかった…というような描かれ方をしていますが、それじゃあこの映画がサイレントである理由はなんなんだろう?
そもそも、ジョージはなぜトーキーを受け入れられなかったんだろうか。声にコンプレックスでもあるのかと思っていたけど、そういうわけでもないみたいだし…という疑問も残りました。
あと、ペピーのジョージへの愛は、むしろあのほくろを描くことによって女優としての命を吹き込んでくれたことへの感謝であったほうがすっきりするなーとか、あらためて思い返すとあんまり納得いかないとこも多かった気がするんですが、ラストシーンで見せる、ふたりの出会いのシーンの再現のような演技にはぐっときたし、後味はよかったです。
でも感動大作みたいなCMの仕方はどうなんだろうなーって思う。