SHAME

監督:スティーヴ・マックィーン

いい映画だったと思います。映像もとても好みだった。
ただ、冒頭で完全に勘違いをしてしまったことがあり(ネタバレにはならないと思うので最後に書いときます)、それが原因で私のこの映画に対する印象はかなりずれているような気がします。でもきっと、見る人によって印象が異なるように作られている映画でもあると思ったので、それはそれでいいのかもしれない。
何が起きるかということよりも、理性と性欲との狭間にたつ主人公からにじみ出るような虚ろさが印象的な映画で、特に中盤以降、彼の他人との距離のとり方の描写などが積み重なっていくにつれ、背中が心もとないような、ひんやりした気持ちになった。
もう一人の主人公ともいえる彼の妹は、兄とは対照的に他人の愛情を常にもとめているような女の子。見ててほんとうにひやひやするくらい危ういし、鬱陶しいし、でもたまらなく魅力的だと思いました。
で、結局何が「SHAME」だったのかは、見終わった後に連れとあれこれ感想を話し合っても全く一致しなかったので、見る人次第なのだと思います。
自分の思うところも見終わってしばらくしたらやっぱり違う気がしてきたので、いつかもう一度見てみたい。

ちなみに私の勘違いとは、映画の冒頭に主人公が2度、留守番電話を再生するシーンがあって、その2回ともしつこく彼に電話をとるように迫る女性の声なのだけど、その語句が2回とも「同じものだ」と思ったことでした。そのせいで私は「別れた恋人が忘れられず、最後に残された留守電を再生するのが日課になっている主人公」という前提で映画を見始めてしまったのでした。これは一緒に見た人の印象では「ただ身近に鬱陶しいうっとうしいやつがいるという前振りじゃない?」とのことでした。
でも見終わってしばらくたった今は(電話が2回とも同じだったというのは勘違いだったにせよ)、彼の気持ちがどこにもないことこそが、この映画の中心にあったような気がしています。