「f植物園の巣穴」/梨木香歩

なんとなく、植物の多くでてくる本が読みたいと思い、それなら梨木香歩さんの本だろうと書店に行くと、タイミングよく文庫の新刊でこの「f植物園の巣穴」が並んでいて手にとった。
植物園に勤める主人公が、歯の痛みに耐えかねて風変わりな歯科医院を訪れるところから物語がはじまり、1転2転、物語は過去と現在、異世界と現実世界を行き来する。境目をにじませつつ、いつのまにか新たな色となって現れるかのような物語で、とても面白かった。
植物の名前がたくさんでてくる、というわけではなかったけれど、ずっと水場にいるようなお話だったので、梅雨に読むのにもうってつけだったように思う。

f植物園の巣穴 (朝日文庫)

f植物園の巣穴 (朝日文庫)

ところで、私がいままで訪れたことのある植物園は片手で数えられるほどしかないのだけど、この本を読みながら思い浮かべていたのは、文京区にある小石川植物園でした。
そしてこの感想を書くのに、カバー袖を確認すると、装画は「小石川植物園植物写生図より」とあり、嬉しく感じました。近々また、行ってみたいと思う。