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 遠くの町の灯/「シティライツ」 大橋裕之

夜に見下ろす町の灯りは、海の底に沈む宝物のように遠くはかない…というような場面を、詩か小説かなにかで読んだことがあるのだけど、町の灯りとはそのように遠くから眺めたときにはじめて、特別に思えるものなのかもしれない。そんなことを、寒空のしたベンチに腰掛けているときのようなしみじみした気持ちで考えているのは「シティライツ」が完結してしまったからなのですが、私はこの漫画がとても好きでした。過去形なのは、既に好きでしたという意味です。
面白い!とか、うまい!とか、さけびたくなる感じとはちょっと違うんだけど、例えば、ずっと昔の恥ずかしい失敗を思い出して、こっそり笑いつつ、でもあれは失敗ではなかったかもしれないと考える時のような、愛しさと切なさと情けなさと眩しさが入り交じった漫画で、そういうところが特に好きでした。
この最終巻では特に最後の2作品がよかった。
「ハンカチーフ」は、最後の大ゴマトーン遣いにどきどきしました。人生の名場面はこうでなくちゃ! と思った。それから最終話「光」。
カバー裏に作者のあとがきのようなメッセージがあって、これがまたすごくいいので買ったらぜひカバーを外してみて欲しいのですが、そこにこんな言葉がありました。

表通りも裏通りも先人たちが焼け野原にしやがったんで。まあまだ誰にも見つかってない森や雑木林みたいな場所は確実にあって、もちろん探しますけど、実は見つかってないんじゃなくて、そういう場所は見つかる必要がなかったのかなとも思います。それでも知りたいことがあるのでまだ続けていきます。

うん……、って思うんだけど、でも「シティライツ」を通して、見つかってない場所の一部を見つけたのは確かだと思うし、それが私にとっては、海の底に沈む宝物のように感じる瞬間がありました。最後の話を読み終えたときとかね。

もっと続いて欲しかった気もするけど、巻数重ねると途中から買い出す人って少ない気もするので、タイトルをかえてまたこういったシリーズを描いて欲しいです。そしてヒットして、シティライツは全巻分合本になった特装版とか出ればいいしそしたらまた買います。
誰にでもおすすめ! というわけではないですけど、この最終巻まで読んだ読後感のことを、私は忘れないと思う。

シティライツ(3) <完> (モーニング KC)

シティライツ(3) <完> (モーニング KC)