ルビー・スパークス


長らくスランプだった小説家の主人公が、夢で見た女の子を文章に描きはじめると、ある日彼女が実在として現れて、しかも自分のことが好き…! というお話。理想の女の子と出会った主人公は最初、彼女についてそれ以上書き足すことはやめようとするのだけど、だんだんと彼女との仲がうまくいかなくなってきたところでとうとう「彼女を操作する」ことに手を出してしまう。
人物として成り立っていた彼女が、書き足されることで狂っていく感じはとても切羽詰まっていて見ていてしんどかった。元に戻そうとしたってそれはうまくいくものでもないよね、って見てる人のほとんどが思うだろうし、だからこの映画の結末は、物語が始まったところから、わりと想像がつくところだと思います。
それでも、理想の女の子が実在するのだと分かった瞬間の世界が輝く感じや、だからといって主人公の「思い通り」にはならないことの理由が浮き彫りになっていく過程はとても見応えがあってよかった。
これは世界には他者いて他者は自分ではないのだということを、改めて知る物語なのだとも思います。母親がすっかりかわってしまった、という描写があるところになんか彼の抱えているものの一端があるようにも思ったけど、ともあれ、彼が母親の家で本を読んでた木の上の家はすてきでした。

あんまり詳しくないんだけど、一時期、ボーカロイド曲をあれこれ聞いてみた時期があって、その中には曲を作る「P」とボーカロイドの関係を描いた歌が一定数あるのが面白いなと思っていて、「ルビー・スパークス」を日本に置き換えて物語にするなら、ボーカロイドを題材にしたお話になりそうだなーと考えていたら、その前に『電影少女』や『ルサンチマン』があったことを思い出しました。
「理想の女の子」ものって意外と多いのかもしれない。