「横道世之介」

シネマハスラーの「横道世之介」回を聞いて、これは見に行かなくてはと思い行ってきました。とっても楽しかった!
物語は、世之介が上京して大学に入学した1987年の1年間を軸に、世之介とかかわった人々の15年後が挿入されていく構成になっています。世之介というキャラクターのもつ雰囲気のままに、のんびりたんたんと描かれる映画なんだけど、懐かしい人の話を聞いているような、自分の思い出の中を視点を変えて辿っているような気持ちで、160分もあったのに少しも退屈するところはありませんでした。登場人物がみんなとても愛らしくて、噛み合わなかったり、噛み合わない事に笑っ足りしている様子を見ているこちらも、映画を見ている間、ほとんど笑っていた気がします。一緒にみた友だちと映画のシーンあれこれあげて笑った帰り道も含めて、とても楽しい映画だった。
1987年の美術もよかったな。冒頭の新宿で、なんか見たことあるポスターだなーと思ったのは斉藤由貴のAXIAのポスターだったみたい。どこだかわからなかったWデートの待ち合わせ場所は、下北沢の駅前だったとのことなのだけど、あんなにごちゃごちゃしてたんだな。北口なのか南口なのかもわかりませんでした。

世之介を演じた高良さんはとても綺麗な俳優さんなのに、世之介役ではまったくかっこよく見えないのもよかった。世之介役が他のひとだったら、きっとまったく別の映画になっただろうし、この人だからこの愛らしい映画になったのだと思います。好きなシーンは銭湯で快諾するところ。
吉高さん演じるヒロインの祥子も激キュートでした。素っ頓狂なお嬢様で、世之介を気に入ってぐいぐいくるんだけど、肝心なところでちょう恥ずかしがりだったりとほんとーーにひたすらかわいい。こんな人は二次元にしかいないでしょうと思うようなキャラクターが吉高さんによって具現化されてしまっているのがすごいと思いました。この役も、別の役者さんがやったら全然違う映画になったような気がします。好きなシーンはたくさんあるけどハンバーガーのとこで帽子が落ちてくるのはあれ偶然なのかな。自然ですごくよかった。あとサンバ見に来てるシーンとかアレルギーの話とか落書きとか全体的にかわいい。
先日最終回を迎えたドラマ「最高の離婚」がたいへん面白かったんですけど、そこではちょっと苦手…と思っていたあやのごーさんもこの映画でたいへんいいなと思いました。最初っからつれないのに、家にいりびたる世之介を完全に受け入れてるスイカからのシーンがとってもよかったです。

あんなこともあったしそんなこともあったねって思い返しながら、でもそこには絶対に戻れないんだよなー、という遠い視線の挟み方と、世之介というキャラクターの、主人公でありながら内面のいまひとつ掴めない感じは、やっぱり「思い出」に似ている。
映画を見ながら思い出した人が3人いたのだけど、浮かんだ理由には苦いところがあるにせよ、久しぶりにその顔を思い出すことができてよかったなとも思いました。