「夏への扉」/ロバート・A・ハインライン

いつか夏休みに読もう、と思って先送りにして何年も経ってしまった本。それだけに自分の頭の中に「こんな話かな」というイメージがかなり出来上がっていたのですが、いざ読み出してみると私の想像していたものとは全く違い(当たり前)、想像の何倍も面白かったです。そもそも私のイメージしてたのは夏と猫(ハヤカワ文庫版の表紙に猫が描かれているので)を中心とした物語だったのですが、猫はともかく夏はほとんど全くといっていいほど関係がなかったので、わざわざ夏休みに読もうというもくろみ自体が的外れだったし、結果冬の終わりに読んだのですけどそれで良かったのだと思います。so it goesです。

夏への扉[新訳版]

夏への扉[新訳版]

名作として名前が挙げられることの多い作品なのも納得の面白さとわかりやすさで、読むのが遅い自分にしては珍しく、あっという間に読み終えてしまいました。ハラハラしながらページをめくっているのに、あちこちに立ち止まって眺めたくなるアイデアがあって、読み終えたあと、この小説が書かれたのが1956年だという事に本当に驚きました。だってそれほとんどiPadだよねっていうような新聞の描写とかあったよ。
物語はタイムリープものなのだけど、2つの異なる道具を登場させることで生まれる時間の重さと軽さの対比(として描かれてるわけではないけど)も印象深かった。主観を伴わない時間って、振り返ることはあるのかなとか、そもそも毎日朝おきて、眠る前のことを思い出す時、私はそれをどのくらい前のこととして感じているのかなとか。
それから、私はタイムリープものの昔*1の作品を読んだのはたぶんこれが初めてなのですが、タイムパラドックスについての描写がとてもシンプルにとどめられているのが新鮮でもありました。あと、自分にとってタイムパラドックスを考える基準が「バック・トゥ・ザ・フューチャー」なんだなということを改めて思い知ったりもした。
ラストの年の差云々はなんかちょっと、いいんですかね? みたいな気持ちにもなりましたがこれも21世紀ならではの感覚なのかもしれません。
ともかく、とても面白かった。もっと名作って言われるような作品を読んでみたいし本読むの早くなりたいな。

*1:少なくとも70年代以前