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 春

桜はすっかり散ってしまったのに、風が吹くとまだ少し花びらが混ざっている。
夕暮れ時の駅前は、道いっぱいに広がって歩く若い人たちがいて、立ち止まって辺りを見回す人もいれば、きびすを返し戻ってくる人もいる。その多くの足取りはまだどこに向かうか決めていないような、ついて行く目印を探している足踏みのようにも見える。
よこみちよのすけの冒頭でpepeがうつったとき、あそこから西武線にのって大学に通っていた頃のことが、わっと甦ってくるような気持ちになった。
学食で外が暗くなるまで話したり、誰かの家を泊まり歩いたりするのは楽しかったけど、友人たちを探して学食をのぞく瞬間はいつもどこか緊張していた。新しい顔、新しい言葉、まだ覚えていない道だらけでうまく歩けない感じは、面白いけど落ち着かなくて、だから西武新宿駅から埼玉まで、ガラガラの電車に延々とひとりで電車にのっている時間は、空白で、大事な時間だったのを思い出した。
今は歩きづらい夕暮れ時も、きっとそのうち目的地に急ぐ人の方が多い道に戻るのだと思う。ということを暖かかった先週に思った。