「共喰い」


監督:青山真治 原作:田中慎弥
原作のある作品ですが、まるで北九州サーガの続編のような青山真治映画でした。青山監督が原作があるものを映画化すると聞いたときは少し意外に感じたのですが、なるほどこの物語ならば、と納得してしまうくらい北九州サーガでした。
特に「サッドヴァケイション」の流れにあるような、男も子もおいてひとりで根付いているように見える、母親の姿がとても印象に残った。
父親の下品さも性欲に振り回される主人公も見ててしんどかったし、町は狭く、息苦しい。ただ、対する母親、主人公とともにくらす父親の愛人そして主人公の彼女という3人の女性の、心もとないようでいてどこか晴れやかな佇まいはせいせいとしていて、物語で描かれる事件のむごさを乗り越える希望のように見えた。
その佇まいは、汚れているようで美しい、川を中心とした風景の描かれ方にも重なっているように感じた。