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 「繕い裁つ人」5巻/池辺葵

繕い裁つ人(5) (KCデラックス Kiss)

繕い裁つ人(5) (KCデラックス Kiss)

池辺葵さんの作品は、どれもとても静かなのに、引きこまれてはっとするような瞬間が必ずあるように思う。
この5巻も、主人公である市江さんの

他のものはあきらめる覚悟でこの仕事をしようと自分勝手に決めたのに
一人でミシンを踏みつづける毎日を思うとき
あれもこれも手に入れているように見える人をねたましく思ってしまうこともあるんですよ
いやですねえ 満たされてることは何の罪でもないのに

という告白に始まり、すごく静かに、でも確実に市江さんの心が葛藤している様子が伝わってきて切なかった。
そんな中、一瞬市江さんから視線が離れるかのような、ショーウインドウに飾られた市江さんのワンピースを眺め続ける女性の話は、昨年読んだ「どぶがわ」にも通じるような奥行のあるお話だったように思う。
画面に書き込まれていることは多くはないのに、まるで実写でみたかのような余韻の残る作品だと思います。