「アズミ・ハルコは行方不明」/山内マリコ

アズミ・ハルコは行方不明

アズミ・ハルコは行方不明

一昨年読んだ『ここは退屈迎えにきて』(http://d.hatena.ne.jp/ichinics/20121011/p1)がもうずっと忘れないだろうと思う1冊になった山内マリコさんの新刊。
『ここは退屈迎えにきて』と同じく地方都市を舞台に、主に4人の登場人物の視点から描かれる物語。

「お前は? これからどうすんの」/p52

という問いから逃げ続けるような日々から抜け出したくて、寄り添って、また離れる。そこに杭を打ち込むことを選んだようでいて、実は表面をひたすらなでていただけ、という幾重にも重なった失望と諦念が、でも絶望になってしまわないようにぎりぎりで堪えているような状況描写が息苦しい。

一瞬だけ近づいて、すぐにすれ違い、もう二度と会わない。そんなつき合いをいろんな人と、何度も重ねてきた気がする。最近ちょっと絡んでいる的な、単発的な関係。/p193

だからこそ、ラストに提示される可能性はやっぱりキラキラして見えてなんだかとてもまぶしかったし、主人公の女の子が求めていたものの結論としてはとても納得がいくものでした。それは『ここは退屈迎えにきて』の多くが恋愛ではなく友情について描いているのに近く、作者のテーマのひとつでもあるのかなと思います。
物語の大事なところに出てくる2つの映画、「イクジット・スルー・ザ・ギフトショップ」と「スプリング・ブレイカーズ」も見てみたいなと思いました。

少女ギャングの都市伝説のような描き方とかはちょっと古川日出男さんの「LOVE」や「ロックンロール七部作」のわくわく感を思い出した。