向こう側はちゃんとある

この日記を書き始めて、いつの間にか9年と半年近くが経っていました。一つひとつの文章を書いているときはほとんど意識していなかったけれど、改めて振り返ると9年と半年って、ものすごく長い年月だなと思う。
日記を始めた頃は、自分の日記を読んだことのある誰かと直接会ったりするなんてことを想像していなかった。だからこそ、今まで面と向かって人に話したことがなかったようなことを(それは本や映画の感想でも)書きたいだけ書こうと思っていたし、書きたいことはいくらでもあった。読み返すと気恥ずかしいような文章もたくさんあるけれど、それはとても切実なことだった。
同じくらい、私は顔も知らない誰かの日記を読むことが好きだった。まだブックマークもなかった頃で、どうやって新たな日記を知っていたのか忘れてしまったけれど(キーワードかな?)、何らかの形で知った誰かの日記の更新を楽しみに待ち、読んで考えたことをまた自分の日記に書く、ということも、よく繰り返していたように思う。
世の中にはいろんな人がいて、いろんな考え方があって、本1冊にもさまざまな感想があるんだということを、改めて実感したのが自分にとってははてなダイアリーだったんだと思います。
そしてその中には自分にとってとても大切な文章がいくつもあった。

9年以上経ってインターネットの使い方がずいぶん変化した今も、その頃のことには特別な思い入れがあって、だから更新頻度が減ったとしてもやめるということを考えたことはなかったのだけど、
この週末は自分のそういう往生際の悪さが報われたなと思うような出来事があって、自分でもびっくりするくらい、本当に嬉しかった。なんというか、積み重ねてきた文字には重力があるのだということを感じられる出来事だった。

今もやっぱり、日記を書き始めるときにはキーボードの前でちょっとしんとするような気持ちになる。
でも向こう側はちゃんとある。それは戒めでもあるし、心強さでもある。

長い年月のあいだ、わしはずっと部屋の窓をあけはなち、世界に求愛していたんだ/『スローターハウス5