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 ちーちゃんはちょっと足りない/阿部共実

阿部共実さんの漫画は、初めて読んだのはたぶんネット上で公開されていた短編で、ものすごく印象に残っていて、でも何がものすごいのか、いまひとつ言葉にできないままだった。しいて言えば、自分の中にある、何か目をそらしたい気持ちをにこにこしながら逆なでされる感じ。
それからも、たぶん単行本になっているものは全部読んでて、どれもこの人にしか描けないお話だと思うけど、読んだあとのぐったりした気持ちで、感想を書いたことはほとんどなかったと思う。
この「ちーちゃんはちょっと足りない」は、阿部共実さんの初の長編ということですが、これはほんとうに、作者がこれまで描いてきたことの集大成のような傑作だと思いました。
物語は中学2年生の、いろいろと「足りない」ちーちゃんという女の子を含む仲良しの女の子3人を中心に描かれる。ちーちゃんは、体も小さくて、言動も小学校低学年くらいな感じ。そのことで3人組ののこり2人にはきっと、ちーちゃんを「面倒みてあげている」という視線もあるんですよね。
ちーちゃんはトラブルを起こしたとしても、それを悪いとはあまり思っていない。むしろ悪気をもって何かをすることができる、ということの重みで、ある人物から見た力関係が反転する瞬間がぞくぞくした。
ラストシーンも、何も解決してないし、沼に沈んでいくかのようにも見えるけど、何かすがすがしさもあって、すばらしかった。
阿部共実さんのお話は、弱い人が決定的に砕かれるようなお話が多いので読んでてしんどい…となるけど、ページを開くたびにそこから読み返してしまう、引力があると思います。