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 低気圧

夜、網戸越しに聞こえる空気の感じに夏の寝苦しい夜を思い出していたのもつかの間、夏前の通過儀礼である梅雨がはじまった。永遠に続くかのようだった晴天が一瞬にして曇り空へとかわり空はどんよりと重い。
このどんよりとした重さをもしかしたら低気圧というのだろうかと、思い当たったのはいつだっただろうか。

確か10年くらい前の空が白かった日、新宿で待ち合わせた友人Aと時間調整のために新宿のカフェラミルに入ったことがあった。Aの、それまでの約束と、その後の私との約束の間のつなぎのような時間で、カフェラミルには初対面の、Aの友人2人もいた。私以外の3人は少々込み入った話をしていて、私は何かしら飲み物を飲みながら、ぼんやりと薄暗い店内に眼をやっていた。
斜め前の席にいたカップルの女性が「低気圧だから」と言っていたのだった。低気圧のせいで頭が痛いと。その時も私は、このどんよりとした天気を低気圧というのか、と思ったのだった。
しかし連れの男性は、そんなの迷信だ、と言い切った。天気と体調が関係あるわけがない、具合が悪いと思うから悪くなる、迷信だと畳み掛けた。
彼女はずっとだまっていて、私は低気圧で頭痛は起きるのだと、思ったのだった。

今、低気圧の日にtwitterのTLなどで頭が痛いと言っている人の多さを見て、あの時の男性はどう思うのだろうかと考える。けれどああいう断言の仕方をする人は、きっと自分が断言したことすら忘れているとも思う。
そもそも10年も前の、喫茶店でたまたま近くの席にいた人の話など、気にし続けている方がきっとおかしい。
今日も窓の外は白かった。