火曜日の朝、陸上自衛隊のイラク日報が話題になっていた。朝から通勤電車で、twitterで流れてきた日誌を読みふける。誰かがピックアップしたものばかり読んだせいというのもあるが、戦地における「日常」が極めて個人的な視線を通して綴られているというギャップが、語弊を恐れずに言えば、興味深く感じられた。それがどのような性質のものであるにせよ、自分の知らない誰かの、自分の知らない場所での生活を具体的に知るのは魅力的なことだ。
それは日記や旅行記、毛色は違うがルポタージュ、フィクションならばアドベンチャーゲームの中で拾うTIPSなどの面白さに通じることで、つまり世界という物語(フィクションという意味ではない)の背景を広げるものなのだ、と思う。
そして、それはかつてインターネットで日々更新されていた「ダイアリー」を思いおこさせるものでもあった。当時、私も飽きずに日々日記を書いていたし読んでいた。今その場所はリアルタイムで更新されるSNSが主となったが、何処かの誰かの普通の日常、というのをまとめて読める面白さみたいなことがちょっと懐かしくなったので、まんまと私ももう少し日記を書いてみたくなった。
日報は無理でも、週報くらいならなんとかなるだろう、という気持ち。
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日記文学が好きで武田百合子の「富士日記」や「犬が星見た」はもちろん、深沢七郎「言わなければよかったのに日記」なども好きだ。
けれど先述の日報を読んでいてなぜか思い出したのは「幸福な無名時代」だった。1958年、ベネズエラにおけるペレス・ヒメネス独裁政権の崩壊期のルポタージュを集めた本なのだけれど、政治家の話だけではなく、市井の人々の生活についての取材が多く、そのコントラストが魅力的だった。
それが自分の生きた/生きている時代に関わっているという現実と、そこにいたのは匿名の誰かではなく、生活をする人なのだという当たり前のことへの実感は同時に起こる。そのことを考えながら水曜日も終わった。
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