ラーメンズ第9回公演「鯨」

ichinics2005-02-25

2001年6月1日〜7月8日までの全国ツアー(7ヵ所計17公演)、彼らにとって過去最高の約1万人を動員した単独ライブの模様を完全収録。
【収録作品】
ことわざ仙人
超能力
バースデー
壷バカ
絵かき歌
count
アカミー賞
器用で不器用な男と不器用で器用な男の話

くやしいくらい面白い。

ものすごい完成度と面白さと感動です。おおげさな、と言われるかもしれませんが、私の感想は「ものすごいよ」の一言、と言いたいけど一言に尽きない感じです。1つのコントが終わる度に、やられまくってしまい、観終わった後には放心。心地よい感慨に浸ってしまいました。

少し冷静になったところで懲りずに感想を書きます。
まず、舞台全体の構成、例えば幕間を生かした演出などから、これまでの作品の中で一番「アート」的なアプローチを試みた舞台だと感じました。この公演から四年経った今も、「アート」という枠組みを押し広げて笑いという行為に昇華させることができるのはラーメンズだけだ、と思います。

まず、しょっぱなから言葉の魔術師もとい仙人、と言いたくなるようなめくるめくおもしろ言葉の羅列に圧倒される。「count」での「おっそうくるの? え?次どうなるの? ああそうか。えっ、まじでー、おおー、いやもう無いだろ、えっまだ? うわ−その手があったか! やられた!」という展開は全てのラーメンズコントに対する私の反応のモデルケースのようでした。「壷バカ」では「FLAT」で観たパントマイムの上手さを再確認。
「器用で不器用な男と不器用で器用な男の話」ではまるで1つの短編小説を読む様な感動があり、「絵かき歌」など他の作品も含め、とにかく二人の演技力、キャラクターの演じ分け方の上手さに圧倒されます。見た目には髪型や衣装を最小限に変化させているだけなのに、そこにいるのは全くの別人。
また「アカミー賞」を観てから「jam films2」を見ると、ちょっとした通気分を味わえること請け合いです。
とにかく、全てのコントが全く違う時空にありながら、その世界を支配してみせる二人に感動。後半で挿入されたバッハの「無伴奏チェロ組曲」(の中の一番有名な部分。詳しいことは失念してしまったので後日調べるつもり)は好きな曲だったので嬉しかった。そういえば「バッハ」ってコントもありましたよね。

一番印象に残った作品は、特にどれ、とはあえて言いません。けれど、青さ全開の時期を美術系大学に通って過ごした私には、物語としてかなりリアルに感じられる切なさがあるものでした。でも面白いし、もう泣いてるんだか笑ってるんだか、このコントの数十倍ある長さの作品、例えば映画やらドラマやらを見てもなかなかこれほどまでに感情をもてあそばれることはないだろうという位の威力でした。
とにかくこの「鯨」はレコードで言えば「捨て曲なし。全曲シングルカットっていうかマスターピース」と言えるほどの名盤です。ほんと、くやしくなるくらい面白い。

追記

その切なさっていうのは、例えばスチャダラパーの「From喜怒哀楽」の哀で感じた様なものです。
あとうちでは物干竿が突然折れたことがあります。