オペレッタ狸御殿

ichinics2005-06-05

鈴木清順監督作品ということで、楽しみにしていたのですが、実際みてみたら、もう! 素晴らしく楽しかった! 大満足! 映画館で見て良かった! まだちょっと興奮状態なうえに言葉が追い付く気がしないけど、感想書いてみます。
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清順監督にとっては「狸御殿」ものを撮るということは念願の企画だったとのことですが、大元の木村恵吾監督のシリーズは見たこと無いせいか「人間と狸の恋物語を軸とした歌と笑いと踊りのレビュー」に見ている私は翻弄されっぱなしでした。
舞台のように、役者が入って来て配置につくまでを見せたり、水墨画の中で演技をしたり、変幻自在の空間の中で、奇想天外な展開を魅せる映像に最初は驚くけれど、監督独特の様式美が核となっていることで、すんなりとのめり込める。幼い頃に夢中で本を読みながら夢想するような世界が、そのままビジュアルとして立ち上がっている様な感覚。鈴木清順監督だからこそ、その奔放な世界の舵を取りきれるんだろうなと思います。
映画の冒頭は、舞台の上から観客に向かって話しかけられるシーンで始まるのですが、その瞬間にもう「あちら側」に連れ去られていたという感じ。物語の中には狸の世界と人間界の境目が存在しているんだけど、スクリーンのこちら側にいるはずの観客もろとも「その線」を越えてしまう瞬間だったような気がします。
また、役者さんたちが素晴らしい。この映画独特の「リアルではなく、あくまでも作り物であるというラインをこえないぎりぎりの所で、しかし力一杯に演じきる」という難しいラインを全ての役者さんたちが共通の熱というか空気感でまとめきっていた気がする。絶妙なさじ加減。
特に良かったのは薬師丸ひろ子さんと由紀さおりさん。薬師丸さんのお局様は台詞回しも小気味良く、とにかく笑える。また由紀さおりさんはほんとすごい。プロフェッショナルだ。びっくりして感激した。あの上品なイメージの由紀さおりさんが、「びるぜん婆々」となって踊ったりラップしたりマイウェイを歌い上げたりして、それが全て気持ち良いくらい堂々とはまってて、とにかく面白い。私は由紀さんに夢中になってしまったので、あの由紀さんをみるためだけにでももう一度映画館に行きたいと思いますよ。
そして、主役の二人もとても良かった。チャン・ツィイーは文句なく愛らしい唐の国からきた狸姫を演じきっていたし、着物の所作もとても美しかった。またオダギリジョーさんも雨千代という美しい青年役ははまり役で、やわらかな歌声も良かった。ラスト近くの、中腰のすり足で移動し、見栄を切るシーンなどは特に格好がよかった。
とにかく随所に遊び心のある小気味良い演技や演出があって、ビー玉の涙や子ども狸のゆるいかわいらしさや「グローリア!!」と叫ぶ安土桃山や、印象に残った箇所を挙げたらきりがないです。

お年寄りも楽しめます。若者も楽しめます。小学生も楽しめます。赤ん坊も楽しめます。

という清順監督の言葉に嘘はなかったです。ほんとに楽しかった。映画館でやってるうちにまた見たい。