とどめをハデにくれ/Theピーズ

とどめをハデにくれ

とどめをハデにくれ

私にはすごく仲の良い、ちょっと年上の男友達がいて、もう10年近い付き合いになる。いろいろと趣味のあう友達なんだけど、彼の1番好きなバンドがTheピーズだ、ということは知っていても、ずっと聴いたことはなかった。
それはなんでかっていうと、ずっと前、まだ私が十代の頃に「私も聴いてみようかな」と言ったら「いいよいいよ、別にね、誰かに聴けって言いたいんじゃないんだ」というようなことを言われたことがあったからだ。まあ、ちょっとは拗ねた気持ちにもなったんだけど、きっと彼は、たぶん、その頃の私にはおすすめしたくなかったんだろう。それから、ピーズが復活したときに、彼の書いたレコ評がある雑誌に載ったのを読んで、なんだか私には立ち入れない場所のような気がしたから聴かないでおいた、というのもある。
でもさ、すごく好きな友達のすごく好きなものだったら、やっぱり興味はある。それで、また約10年ぶりに「私もピーズ聴きたい」と言ってみたんだけど、そしたら、奴は私に「いいよいいよ」なんて言ったことはすっかり忘れていて、「ぜひ聴け、今すぐ聴け」と言ってくれたんだった。
その時、これを聴け、というアルバムタイトルも聞いたんだけど、ちょっと酔っぱらっていたときだったから、CD屋に買いに行ったときにはそのタイトルは忘れてた。でもあれね、彼の言動から考えて、たぶんこれだろうなという気がして、その時選んだこの「とどめをハデにくれ」がそれだったってのは不思議だけど、当然とも思えることだった。だってこれは、まんまなんだもの。
そんで、このアルバムを聞いた瞬間、ああもっと早く聞きたかった、そしたらもっと長いことこのアルバムと過ごせたのにさって思った。でもそれと同時に、これを今聴いて良かったなとも思った。
もちろんリアルタイムで聴ければ良かったとも思うよ。でもそれは、このアルバムが出た1993年の私でということじゃなく、今の私のとこにということだ。今の私でリアルタイムのピーズに感情移入したかったってことだ。
なんつうかさ、音楽でも漫画でも小説でも絵でも写真でも、それを発信する人に対して、抱く期待っていうのがあると思うんだ。アルバムがでで、興奮して、何度も何度も繰り返し聞いて、ライブ楽しみにしてライブ楽しんで酒飲んで良さについて話したりしてさ。なんでこの人はこの曲を書いたんだろとかさ、そういうこと想像しながら、今のその人について考えてって、そういう楽しみ方は、別にジャンルとか関係ないことだと思うの。そんで今私がこのアルバムに対して感じてるみたいな共感を、リアルタイムで体験できることって、すごい幸せなことだと思うの。
そういう訳で、私はこれから今のピーズに追い付きたいと考えてるわけだけど、もう一週間以上、こればっかり聴きつづけてて、早く、ピーズ好きの友達とこのアルバムについて話したいって思ってたりする。
全曲いいけど、特に『映画(ゴム焼き)』『好きなコはできた』『日が暮れても彼女と歩いてた』『手おくれか』『シニタイヤツハシネ 〜born to die〜』が気に入ってて、歌詞では『好きなコはできた』が好きだ。「きょうからなんだかメシがうまいぜこりゃ」って言いたいなぁ。でも「は」なのね。