第3回小林賢太郎プロデュース公演「PAPER RUNNER」

GBLまであと少し!ということでDVDを見る。

小林賢太郎プロデュース公演 「PAPER RUNNER」 [DVD]

小林賢太郎プロデュース公演 「PAPER RUNNER」 [DVD]

《出演》
片桐仁久ヶ沢徹/安田ユーシ/犬飼若浩/西田征史/室岡悟/森谷ふみ
2004年4月〜5月に上演されたもの

「Good Day House」と「sweet7」に続く第3回小林賢太郎プロュース公演。前2作が「フロア」と「日にち」で区切られた連作短編集のような構成だったのに対し、今回は連続した時間の中のワンシュチュエーションで見せる舞台でした。
物語は、ある漫画雑誌編集部に持ち込みに来た青年が、急遽穴埋めのための作品を書くことになって…という割合にシンプルなもの。土田世紀さんの「編集王」を彷佛とさせるような熱さを、片桐さん久ヶ沢さんを中心とする熱い演技でくるんだ、表面的には割と王道(ベタともいう)な展開だったように思います。何故ベタと感じてしまうのかといえば、この作品で新人漫画家であるオマタ君が描くことになる切欠や物語の発想法っていうのは、漫画家(だけじゃないと思うけど)を題材とする物語ではやり尽くされたネタだと思うから。
そんな感じで、私にしては珍しく、かなり先が読めてしまった話なんだけど、それでも充分面白かった。今回のポイントは、やっぱり「絵の中に同じ絵があってその中にもまた同じ絵が…」というだまし絵(そういうのなんていうんでしょう? ピンクフロイドのウマグマのジャケみたいなのです。下のほう参照)のような構成を、役者さんが演じるってとこだと思う。
ただ、主軸が、オマタ君とウズマキのどちらにあるのかがちょっと掴みづらかった気もします。入れ子構造をもっと生かすならば、オマタ君とウズマキの関係がもうちょっと深まるとこまで見たかった。ラストの片桐さん演じる編集者ウズマキが1人になって窓の外を見ながら言う台詞がとても良くて、この台詞が今回の舞台のメッセージ的な役割でもあったと思うんですが、これはむしろオマタ君が語るべき台詞でもあったような。

雑感

設定として大きな出版社をモデルにしてる*1んだろうなって設定(入館証、社内で迷う、等)と、いかにも古いビルっぽい舞台美術に少し違和感があった。けど、小林さんの観察力はすごいなと思う。お中元だかお歳暮の缶ジュースとか。そういう細かいとこがリアルだ。が、ちょっといらない情報もあったような気もしないでもない。
それから、この舞台で1番予想外だったのが、小林さんが登場しないこと。一応最後にちょこっと登場するけれど(そこもとても面白かった)、大林って名前から小林さんなんだろうなというのが予想出来てしまうからこそ、出てくるんだと思ってみてたから、ラストの暗転で「えっもう終わり?」と思ってしまった。
最後に1つ、漫画のセオリーについて語られる部分について、ちょっとそのセオリーは古すぎやしないかと思ってしまったりもした。ここは、敢えて残してある突っ込みどころなのかなという気もするけど。

*1:「鼻兎」をアッパーズで連載してたこともあってこういう話を思い付いたんだろうっていうのもある