参考と盗用の差

講談社が出版した漫画家の作品が、別の漫画家の表現に酷似しているとネット掲示板2ちゃんねる」で指摘があり、同社は10月18日、盗用だったとして謝罪し、この漫画家の単行本を絶版・出荷停止にしたことを明らかにした。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20051018-00000079-zdn_n-sci

この方の漫画を読んだ事はなく、事情も詳しくは知らないのだけど、どうやら絵柄を「トレース」したこと、が主な「盗用」として問題になっているらしい。
でも、こういう問題っていうのは、漫画でも小説でも音楽でも、とにかくものをつくるという事にはどうしたってつきまとう。どこからが「盗用」でどこからが「参考」なのかっていう明確な線引きもないので、どれが正しい意見、というのもまだないような気がする。
特に、今回のような図案の盗用でここまで問題になったっていうのは初耳で、しかもこの漫画家さんの単行本を絶版、出荷停止にした、という講談社の判断にも驚かされた。

「許される模倣」と「盗作」の線引きを、道義的にではなく、「法的に」行うことは、現実には難しいところがあるわけですよ。漫画の場合は特に。
http://takekuma.cocolog-nifty.com/blog/2005/10/post_9358.html
マンガ家の描写盗用問題についての私見/たけくまメモより

上記のたけくまさんの記事も、講談社の判断に対して少し驚いている感じだったのですが、確かにそれがストーリーであろうと図案であろうと、あからさまな、オリジナリティのない流用は「盗用」と解されても仕方ないものだと思う。
ただ、今回のことについて疑問なのは、やはり「盗まれた側」である井上さんの意見だ。ニュースを読む限りではネットの指摘により、出版社の自主判断がなされた、というように見えるのだけど、もちろん井上さんは現在講談社で大人気漫画を連載しているわけで、そのへんの配慮とかももしかしてあるのかな、とか少し嫌なことを考えてしまった。
とまあそれはおいておいても、この場合、問題になっている漫画家さんの担当編集者などに責任はないのだろうか。法的に、ということでなくて、たけくまさんがおっしゃるように、フォトライブラリなどを用意するというのも問題の予防にはなるかもしれないけど、そもそも漫画家さん自身が編集者に資料不足を相談できていれば、こんなことにならなかったんじゃないだろうか、と思うんです。
とまあ、これも全部自戒をこめて考えていることなんですが、いずれにせよ、デリケートな問題だと思います。

あと、ちょっと次元が違う話だけど、作品を読んでて「あーこれ○○みたいだな」とか思うのは、その作家さんの趣味嗜好が伺える切欠として読んでて楽しい。でも、そいういうのも、やっぱり線引きが難しくて、今回のようなケースにならないとも限らないわけですよね。で、そこを越えたらいきなり絶版/出荷停止というのはやっぱり、極端なような気がします。