なんか一般発売してないものの感想ってのもなんかなぁと思ったのですが、いちおうメモ的に。ちなみにこれ『春』となってますが、別に春に入賞した人、ということではなく年代順に並んでる中のその1ってことみたいです。
1987年
- 土田世紀/「未成年」
- 今とはまったく違う絵柄なんですけど、こういうタッチは好きです。例えるのにはなんかもっと他にたとえがあると思うんだけど、思い付くのは初期の松本大洋さんの絵柄くらいかなぁ。細い線。お話は大友克洋さんの青春群像ものとかに近いような。まだ土田さん特有の「熱さ」はないんですけど、テンポもいい。最初からうまい人だったんだなぁ。
- GOTAVOICE/高橋努
- 高橋ツトムさんがこんなにキャリア長い方だということにまず驚いた。インタビューを見ると、なんと処女作だそうです。タイトルはたぶん「神の声」という意味だと思う。スカイハイに繋がるような世界観。『地雷震』の時にめきめき絵が上手くなるひとだなぁと思って読んでたけど、この作品を見ると、もともとデッサン力のある人だったんだなと、そんなことを生意気にも思ったりしました。しかし処女作か。すごいなぁ。
- 入江紀子/猫の手貸します
- なんとなく女性コミック誌のイメージがある方だったので、四季賞受賞されてるというのもびっくり。確かこの「猫の手貸します」はその後シリーズ化してコミックスが出たはず。絵柄も最初から安定している感じ。
1988年
- Ronin ハートブレイク!/太田垣康男
- 「MOONLIGHT MILE」の方ですよね。でもぱっと見、尾瀬あきらさんかと思うくらい今の尾瀬さんの画に似てる。
- 少年王に白い雲/須藤真澄
- うーん、今と殆ど絵柄もかわっていないし、お話もいい。ラストのページとかも、いいなぁ。あ、でももうプロになられてからの入賞みたいで、デビューはもう少し前の1984年デュオ別冊・すとろベリィ掲載『わたくしどものナイーヴ』とのこと。
- 奥様進化論/秋月りす
- いわずと知れた(?)「OL進化論」の秋月さん。画は結構違います。4コマの漫画家さんて、こんなにたくさんネタだせるなんてすごいなぁといつも思う。むかーし、秋月さんがどこかで書いていた映画のコラム漫画みたいなのが好きだった。
- 離脱/中山昌亮
- 岩明均さんに通じるようなサイコホラー。アフタヌーンっぽい雰囲気。中山昌亮さんて名前でピンとこなかったんですけど、「オフィス北極星」で画を担当してた方みたいですね。なつかしい。だとするとかなり絵柄が違います。今の絵柄は結構好みの漫画家さん。寡作みたいなのが残念だなあ。
1989
- 8月の光/新井英樹
- このタイトルはフォークナー、なんだろうなきっと。でも内容は青春の1コマといった感じなんだけど、絵柄にもテンポにも、今に通じるものを濃厚に感じます。インタビューに「暗いもの指向の自分と「明るく」という編集者と、打ち合わせはその折り合いをつける作業だった」と書かれていたのが印象的。そして執筆の励みが「怒り」というのも、納得させられる一言だった。
- ウェスタンカーニバル/ヒロモト森一
- この頃から描きたいものが一貫してたんだなぁという印象。絵柄はまだ荒いんだけど、でも独特。
- GOLDEN LUCKY/榎本俊二
- エノモトさんは最初からエノモトさんという感じ。何故かこの作品の記憶がある自分がちょっとこわい。小さい頃からマガジンとモーニングに囲まれて育ったのですが、アフタヌーンは読んでなかったと思うんだけどな。
1989年
- A Mess on a Weekend/王欣太
- 急遽掲載となったキングゴンタ先生の受賞作。当初収録を断っていたというのが納得できてしまうくらい、絵柄もお話も、面影がまったくなくてびっくり。インタビューではかなりこの作品のことをけなしてるみたいな感じだったけど、きっと当時の担当さんもゴンタ先生が現在の方向に行くなんて想像もしなかっただろうなぁ。インタビューでご本人がおっしゃっているとおり、ジャームッシュやヴェンダースの映画みたいな雰囲気。でもすごい上手い。漫画家になる前はインテリアや建築系のデザイナーだった、というのにもびっくり。
- 杯気分!肴姫/入江喜和
- 後にモーニングで連載されたのを読んでいた作品なので、懐かしく読みました。思えば私がはじめて読んだ「喰い道楽漫画」はこれだったなぁ。
- ま、いっか!/ヒラマツミノル
- ドタバタ刑事もの。絵柄は洗練されていて、もしかしたらわあせせいぞうさんみたいな絵もかけるんじゃないかと思うようなタッチ。でも面影はばっちりあるし、テンポのよさはヒラマツさんならでは。レジーやヨリやアグネス仮面も面白いけど、スポーツもの以外も読んでみたくなった。
1990年
1991年
- 名探偵にはなれないけれど/的場健
- 人物の動きとかには面影あるけど、もう少し女性っぽい絵柄でした。キャラクターが魅力的です。
- 魚/小田ひで次
- 濃厚だー。なんかちょっと前衛演劇のような雰囲気。絵柄は後の『拡散』に繋がる感じ。
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夏に続く、たぶん