- 作者: 野矢茂樹
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1996/01/19
- メディア: 新書
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「〈子ども〉のための哲学」を読んだ時に、今まで漠然と哲学史的なもののように捉えていた哲学というものが、実はとても個人的な「考える経過」にあるものなんだと知り、それはほんとうに目から鱗な感覚でした。ただ、そういう書かれ方とは別に、最近仕事で読んでいる哲学書みたいに、ある程度の知識を前提として書かれているものも多く、そうすると全てが推察のようなとても疲れる読書になってしまう。また、100年以上前の文章になるとどうしても納得できないところが目についたりしてしまうのだけど、そこは仕事だから客観的に見なくてはいけなくて、ちょっともやもやしてたんですが、そんな折に、この「哲学の謎」を読むことで、ちょっと頭をすっきりさせたれたような気がします。
そう、何も私は結論を知りたい訳ではないんだった。ただ、感情にまかせて好悪を判断するのではなくて、なんでそう感じるのかとか、そういうところでちょっと立ち止まって考えたかったんだった。
そんなことを前書きの「哲学とは、なによりもまず、この眼前の謎たちを可視化する技術のほかならない」という一文を読んで確認し、この自問自答のような「思考のドキュメント」としてある本を楽しく読み終えたんでした。それで、でも、あれ、なんて思ってるうちについもう一回読んでしまった。同じ本を連続で2回読むなんて久しぶりだけど、会話文で書いてあるせいか、それが苦にならない。
この本には答えのない謎(そしてそれはたぶん多くの哲学者たちが散々考えてきたこと)がそのまんまに謎として残されている。折に触れて読み返しながら、自分の固まった考えに油をさしてくれる存在になるだろう本だと思いました。
というか哲学書ってみんなそうなのかもしれないけど。