「ニート」/絲山秋子

ニート

ニート

絲山秋子さんの最近出た短編集。朝会社に行くまでの電車の中で読みはじめて、帰りの電車であとちょっとになったので喫茶店にて読了。
表題作の「ニート」は語り手の職業が「物書き」で、彼女の私信のような形で描かれている物語。これと「2+1」という短編が前後編のように繋がっているのだけど、「キミにはニートのほうが向いている」と言われてしまう「キミ」と主人公の関係が、近づこうとするほど離れて行くように感じる。ギブアンドテイクが成立しないもどかしさと、それを求めるごう慢さ。「ベル・エポック」で描かれている、夫を亡くした友人と、主人公とのやりとりもまた寄り添えない感じがして、ひどく切ない。
この本の中で最も印象に残ったのは「へたれ」でした。とにかく構成がいい。それから引用されている草野心平さんの詩も。

みんなの孤独が通じあふたしかな存在をほのぼの意識し。
うつらうつらの日を過ごすことは幸福である。
「ごびらっふの独白」の日本語訳/草野心平

絲山さんの書く物語には、この感覚を目指しているものが多いような気がするのだけど、それが通じるときと通じないときはやっぱりあって、この短編集では「通じない」ほうのお話ばかりが集められていたように感じる。