浮き雲

監督:アキ・カウリスマキ
カウリスマキの映画で1番最初に見たのがこの「浮き雲」で、その後レニングラードカウボーイズの人だと知ったりしたのですけど、まあとにかく今でも大好きな映画の1つです。ちなみに、この前ユーロのLEAVING HOME最終日に見に行こうと思ってていけなかったのが、今回まとめてどっぷり見てみようと思いたった切欠だったりします。

真夜中の虹/浮き雲 [DVD]

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この物語はある夫婦が失業するところからはじまる。仕事はなかなか見つからず、生活は逼迫していくが、2人ともそれぞれのプライドになかなか折り合いをつけられないでいる。まるで出口のない不幸の中に沈んで行くような2人は、しかし決してお互いのプライドを軽んじたりはしない。ただだまって支えあっている。
登場人物たちは無表情で寡黙だというのはカウリスマキによる殆どの映画に共通する要素だけれど、そこにある空気はくっきりと伝わってくる。そんな描き方は、映画だからこそ出来る表現なのかもしれない。
それから、初めて見た時に印象的だったのが、その編集方法が殆どフェイドイン/アウトで繋げられているという大雑把なところだったのだけど、その無骨なところが、カウリスマキの味でもあるのだろう。
台詞のやり取りもまた、発する言葉の手前にある沈黙で語るようなところがある。決してうまく転がってはいかない登場人物たちの人生のように、立ち止まりながらでも確実に変化していく。
元支配人と酒を飲むシーンの「これまだ飲んでないわ」「でも、もう4杯目ですよ?」「人生は一度きりよ」というやりとりが好き。(あの支配人の人は草村礼子さんに似てるなぁと思います。というか「shall we dance?」のたま子先生に似ている。)
不況というのは本当に恐ろしいものだと痛感させられるとともに、不幸を嘆くばかりでなく、少しでも良い未来を見ようとすることの希望を感じさせてくれる作品です。生活するぞ、という気持ちになれる。