白いはなびら/愛しのタチアナ

白い花びら/愛しのタチアナ [DVD]

白い花びら/愛しのタチアナ [DVD]

監督:アキ・カウリスマキ
引き続きカウリスマキ週間。

白いはなびら

これは初めて見ます。1998年に製作された無声映画。時折黒地に台詞だけのカットが入るくらいで、ほとんど何を言っているのかはわかりません。物語はただ、音楽の展開(しかもほぼ同じ旋律のアレンジの変化)によって解説されていくのだけど、これがまた雄弁な画面にぴったりとあった演奏でした。例えば扉を叩くシーンで、突然画面の通りに扉を叩く音が入ったりすることで、すごく生々しい印象が残るのが面白い。
この「白いはなびら」の原作はフィンランドでは古典的名作として有名なものらしく、このカウリすマキ版以前にもニルキ・タピオヴァーラ監督の『ユハ』という作品で映画化されているそうです。そちらは未見(DVDとかにもなってないらしい…)なのですが、ストーリーはかなり違っているようで、あらすじを見比べると、カウリスマキ版は、よりシンプルにディフォルメされているみたいです。
おしどり夫婦が妻の不貞&逃避行によって不幸へと転げ落ちて行くお話なのですが、とにかく上手いなぁと思ったのが湖畔でのデートシーン。
都会から来た男が何気なく踏みにじる白いはなびらが、物語の行く末を暗示していて、その画面で語る感じが「映画」です。カウリスマキ監督らしいなぁ、なんて思いました。

愛しのタチアナ

1994年。カウリスマキ映画の中でも、かなり好きな作品です、見ている間中にやにやしてしまう、不器用な男のロードムービー
物語の冒頭に、ミシンを踏んでいるヴァルト、そしてその奥で葉巻を吸っている母親という構図なのだけど、もうそれだけでヴァルトという人物のおかれている状況が透けて見える。鬱憤の溜まっていた彼はそのまま母親を納戸にとじ込め、友人と2人でドライブに出かけてしまう。そして、その道中で2人のロシア人に「故郷に帰る船に乗るから港まで送ってくれ」と言われるのだけど、ヴァルトはただ珈琲を飲んでばかり、友人のレイノもウォッカを飲みっぱなし、女性2人がまるでそこに居ないかのように振る舞うのがおかしい。
結局2人は金魚のフンみたいにしてロシアに着いて行ってしまうのだけど、ロシアの変わり果てた様に驚き(ということは説明されないけど表情を見ればそうだと伺える)2人は別々の路を歩むことになる。そして膝を抱えて座り込むヴァルト。あの包みを開けるシーンが好きです。
おかしくて切ない。フィンランド版「さらば青春の光」みたいな感じ。いや違うか。