どこへも帰らない/theピーズ

去年の6月に「とどめをハデにくれ」を聴いてから、しばらくあのアルバムばかり聴いていて、ちょっと前に「赤羽39」聴いてからは、どっぷり39だったんですが、その間に聴いていた「どこへも帰らない」というアルバムは当初、何か耳に入りにくい感じがしてたんだけど、聞き直してみたらすごいよかった。
なんというか、弱音吐きつつ悪態ついて喧嘩売って負けて酒飲んで寝るみたいな(id:ichinics:20060125:p2)気分は私にも確実にあるわけですけど、それが出来ない自分もいて(長女気質)、それなのに、ちくしょう(それはもう畜生の意味とはかけ離れている。もちろん)、とか切実に言いたいときがあるわけです。で、「赤羽39」聴いた時には、もちろんすごい好きなアルバムになったものの「まだ私はここまで来れてない」って感じてたのに、先に行きたい気分はあって、今やっと「どこへも帰らない」に焦点があったような気がする。勝手に。そんでまた私はあーこれをリアルタイムで、今の私の時間で聴きたかったとか思うんだけど、でもそうやって遅れてくるものっていうのもやっぱあって、単純にこれ聴くとこまでやってきた巡り合わせを喜ぼうとりあえずという感じです。

どこへも帰らない

どこへも帰らない

以下長々と思いの丈。

「脳ミソ」

「脳ミソが邪魔だ/半分でじゅうぶん」という吹っ切れからアルバムは始まる。頭で考えるから行動できない、と思う時の、あの見えなさから、見えるもんがすべてでいいじゃん、ってとこに突き抜ける感じ。そう考えられたら軽いはず、っていうか、もうそれしかないという時の感じ。

「底なし」

イントロのギターが良い。脳ミソ半分で軽くなったはずが、飛んだ、と思ったら落ちて潜った底なしの歌。

おう、どうだい いい眺めだぜ 我ながらグウ
さんざんバカやって やっと手に入れたんだぜ
とんだ堕ちた潜った 思い知れ 受け入れるしかないぜ

この諦め吹っ切って「ちくしょう」って感じがすごく愛おしい。

「どこへも帰らない」

諦め身に纏いつつ未練も引きずって、でも、先のことなんてわかんないのがいいじゃん、とりあえず先に行くぜっていう強がる気分。「我に返ったらオシマイだ」ってのにどきっとする。でも「行ってらっしゃい」って置いてかれちゃう気分。ちくしょう。

「ザーメン」

ライブとかで見たら躊躇いもなく歌ってしまいそうですが、でも好きな曲。ロックンロール。「最低最高全部一緒」って、ちくしょうの後はそれだよな。でもこの吐き出す感じを実感として理解できないのが残念。

「とどめをハデにくれ」

もういいよ!好きにしてくれよ!と言いたい気分。どうせ俺はかませ犬ですが悪態はつくぜってかどうせやられんならサッサとやってくれと言いつつ勝手にリング外に飛び出る。

「負け犬」

飛び出たものの、リングにはやっぱ未練もある。「人んせいにできてりゃいいさ/プライドがなんだ/ねぇよそんなもの」という逆切れなんだけども、確かに人のせいにできてりゃ楽だ。じゃないって知ってるから自分を負け犬呼ばわりしちゃう。しっかり棒にふれ。負けるが勝ちとか言ってしまえ。

「ヘイ君に何をあげよー」

泣く。私が思う好意ってこういうことだなとか思った。

彼女を自由に飛ばしたい/そんで追い付きたい
はまってるヒマはねぇ/何をあげよー
何もしてやれないまま/ひとり暗くなっていく
焦ってダメになっていく/カラッポでボロんなってく
君に何をあげよー

「ゲット・バック・アブ」

ハッピーぶっていきなりしらけちゃうのはむしろ照れな感じですが、すごい楽しい曲。ライブとかだと盛り上がるんだろうなぁー。

「何も憶えてねー」

弱音吐きつつ悪態ついて喧嘩売って負けて酒飲んで寝た次の日の朝。でも最後ちゃんと謝るの。

「やっとハッピー」

泣く。幸せぶってしらけてみたけど、やっぱ格好つけてないで「ここにいたい」と思うかんじ。「カン違いでもいー」って言葉がいいなぁ。「調子ん乗っぞー」ってのもいい。「出来るだけ無理してでも同じトコにいよう」と言うのは、とても勇気のいることだ。

「何様ランド」

ものすごい名曲。すげー。大好きすぎる。

ヒトの気分はヒトの気分だ
使えないんだ つき合えないんだ
自分自身がアテになるんだ
夢の中で夢をみるんだ じゃますんなボケ!

このサビの部分がまたすごい良くて、この後に「逃げねーんだ/アテにするしかねーんだ」ってのが沁みる。弱音も吐ききって突き抜けた。

「ハニー」

さて女の子を口説こうかっていう歌なんだけども、ライブのラストみたいな軽快さが気持ち良い。
* * *
実際にこの曲とこの詩がどのようなところから書かれたのかは私には知ることができないのだけど、それでもなんていうか、ねじれた輪っかみたいに、表も裏も紙一重で、もしかして全部そうなんじゃないの、でも何かに決められたくねー、と言いたい気分の時に、とても勇気づけられるアルバムです。そこにあるものを「理解」は出来なくても、そこに自分の中のもやもやを写して、その輪郭を見ることは出来る。たとえそれが自慰行為でも、そこ越えると、もうちょっとよく見えるようになることもある。とても大事なアルバムになりました。

過去感想

「とどめをハデにくれ」id:ichinics:20050625:p1
「赤羽39」id:ichinics:20060128:p3