「長い道」/こうの史代

長い道 (Action comics)

長い道 (Action comics)

ほんともう、うまい言葉なんてみつからないけど、私はこの漫画が好きです。
ちゃらんぽらんで女好きな男、荘介のもとに、ある日「おんどれのヨメじゃ」と父親から送られてきたお嫁さん“道”。そのふたりの生活のお話です。
かみ合っているようで、かみ合わない、でもだからこそしっくりきている、二人の暮らしには、おもわず吹き出してしまうような場面もたくさんある。いとおしい空気。でも、その合間にはさまれる道の見ている風景が、この漫画の中の空間に奥行きを作り出している。期待や安心からは、少し距離をおくような。たとえば「最初の日」や「水鏡」などに描かれてる、このぽっかりとしたひとりだけの世界から、もどってくるあの感覚に、私は鼻のおくがじーんとしてしまう。
ひととひととの関係は、ただお互いが向き合っているときだけでなく、このように、それぞれの世界の中で重なりあい、積み重なっていくのかもしれないと思う。
あとがきを読んで、とうとう泣いてしまった。こんなすてきな漫画を、読めて嬉しい。