ヒストリー・オブ・バイオレンス

監督:デビッド・クローネンバーグ

クローネンバーグ映画は実はちょっと苦手なのですけど、IMAOさんの日記(id:IMAO:20060412)でオススメされていたことと、新井英樹がパンフに文章を書いている*1、ということを知って見にいかねばと思い立ち行ってきました。
* * *
原作はヴァーティゴレーベルのコミック(グラフィックノベルというのか)だ、という町山さんの記事が頭にあったので(http://d.hatena.ne.jp/./TomoMachi/20050805)もうちょっとアメコミ風の物語を予想していたのだけど、これはかなり予想とは食い違っていました。
物語は、幸せな家族を脅かす影と、それに立ち向かうことによって明るみにでる「ヒストリー・オブ・バイオレンス」という、割合シンプルな筋をまっとうに描いていたように思います。クローネンバーグにしては(なんていえるくらい見てないけど)ストレート過ぎるくらい。だからこそ、豪華な俳優陣の演技が物語の輪郭を際立たせる、という印象。(ちなみに脚本は「MONSTER」の脚本も手掛ける方らしいです)
私は最初、この映画のテーマは「暴力の連鎖」なのだろうと思って見ていました。そして、その暴力を止めるものとして「家族の愛」を描くんだろうか、なんて勘ぐりながら映画を見ていました。
しかし、この映画の主人公(および息子)は、追い詰められた場所で、最終的には暴力を選択する。その暴力の描き方は、とても残酷で、主人公の顔に血を浴びせるという画面づくりからも、決して暴力を美しく描こうとしているのではないことは、理解できます。
暴力を選択せざるをえない状況である、ということは分かる。でも、と思わずにはいられない。暴力に対抗できるものは、暴力しかないのだろうか? 家族が危険にさらされたとき、その原因を「排除」しなければ、やはり安心できないのだろうことは理解できても、でも、と思ってしまう。
でも、そんなふうに「でも」と葛藤している「家族」の側の描き方こそが、この映画の特筆すべき部分であるとも思う。
あのラストシーンの後、彼等はどのように生きていくのだろうか。

*1:ところが、パンフ2種類あったみたいで私が買ったのには載ってなかった…確認してから替えば良かったです