「世界の果てのゴミ捨て場」に住んでいる女の子と、ゴミ捨て場に新しくやってくる様々なものたちの物語。
世界の果てのゴミ捨て場での日々は、静かで、ひんやりとして、でも日だまりのようでもある。その安心は、自らに価値を見いださないことへの赦しなのかもしれない。
ああ、いいなあ紙キレ
とるにたらない
燃やしたら消えちゃう
あたしたち
たかがそんなものなのね…
傷つけるものなんてなにもない、私だけの世界。行進し続ける将軍とカモミールのように、その世界は円環を描き、いつまでも終わらないように思える。
でも、それが終わる瞬間は、ただ目を開くことだったり、する。でもそれはぜんぜんさみしことじゃなくって、と思えるバイバイの笑顔が、よかった。そして、誰かの記憶の墓場としてあった「天国」のようなその場所は、通り抜けた後も、自分の一部としてあるのかもしれない、なんて考えた。
- 作者: 鈴木志保
- 出版社/メーカー: 秋田書店
- 発売日: 2005/12/16
- メディア: コミック
- 購入: 4人 クリック: 31回
- この商品を含むブログ (59件) を見る
→
「ヘブン…」を読み終えて最初に思い出したのがカポーティの『遠い声 遠い部屋』だった。少年も、少女も、中に詰まっている成分が違うだけなんじゃないかなぁ、とか。
キラキラと銀色に輝きながら、その女は彼に向かって手招きをした、彼は行かねばならないことを知っていた――恐れず、ためらわず、彼はただ庭の端でちょっと立ち止まっただけだった。彼はふとそこで、何か置き忘れてきたように足をとめ、茜色の消えた垂れ下がりつつある青さを、後にのこしてきた少年の姿を、もう一度振り返って見るのだった。
『遠い声 遠い部屋』
*1:まあそれは久しぶりだったのと、主人公がアシカじゃないからだと思うけど…