マフィアとルアー/TAGRO

マフィアとルアー (DNA comics)

マフィアとルアー (DNA comics)

TAGROさんの漫画は、ファウストでしか読んだことなかったのですが、最近就寝のお供にしていた「土曜日の実験室」で

浅野いにおにも通じる青さと痛さを内包しながら、絵柄は純度の高いオタ絵。(略)新世代青春モノの可能性と、それが主に同人誌でしか発表できなかった限界とが同居している。
「土曜日の実験室」西島大介

と評されているのを読んで、この作品集を知り、読みたいなと思った翌日に偶然見つけて購入。そういう「運」てうれしい。
で、読んでみたのですけど、浅野いにおというよりは、ひぐちアサ寄りかなぁと思った。それは自意識が表に出るときの感じ、の差だと思うんだけど、でもこの作品集を読んでいて思うのは、「フィクション」を描いている冷静な演出と、紙一重のところで葛藤しているとこまで見せようとする、露悪趣味(私個人の好悪とは別に)と、その両方をもっている人なんだなというとこだった。この作品集でいえば、前者は「マフィアとルアー」後者は「LIVE WELL」そしてその間に位置するのが「R.P.E.」なんじゃないかと思う。その触れ幅の好みは読者それぞれだと思うけど、私はこの人の描く「フィクション」に近い作品の方が、好みかもしれない。
ともかく、この「マフィアとルアー」は、作者のいろんな面を見れる充実した短編集だと思う。

自分のようにクズのような人生経験しか持たない人間でも、この二次元記号の放送塔にセント=エルモの火を灯せないものかと考えてしまうのだ。重い腰を上げ、いざ机に向かった時は。
商業だろうが同人だろうが同じ思いで描いている。だから堂々と売る。
あとがきより

こういうあとがきを読むと、グッときます。素直に。