ジブリ「ゲド戦記」について

先々週あたりに、試写会で見てきました。
公開前なので感想書いていなかったんだけど、ブクマ見ていたら早くも酷評に流れているので驚いた。
確かに子供が見て面白い映画じゃないだろうなぁ、と思う。そしてあんな大きな宣伝をされるような華やかな物語でもない。もっと慎ましやかな作品だった。
それでも私は「良い」と思った。その理由を何度か書こうとしてるんだけど、これがなかなかうまくいかない。
[一応畳みます]
説明的な描写はなく、謎は謎のまま残されているので、そこを消化不良に感じる人も多いと思う。物語は原作に忠実ではなくて「原案:ゲド戦記」という感じです(とはいえ、私も最終巻まで読んでいなくて、最初の方の巻を読んだのもかなり前なので曖昧なのですが)。
しかし個人的には筋の破たんはあまり気にならなかった。それはなんでかというと、この映画で扱われている「物語」は、ただ、主人公アレンの心の動きだけなんだと感じたから、だと思う。
アレンは全てに無気力で、投げやりで、キレやすい。そんな主人公をアイドルに演じさせていいのかなぁーと思ってしまいますが、ともかくそのアレンの心に「動き」が訪れる場面にはヒロインのテルーがいる。その辺を見てると「ジブリゲド戦記」はシンプルなボーイ・ミーツ・ガール(便利な言葉だけど)なお話なんじゃないかなぁって感じる。そしてある場面なども含め、「ゲド戦記」というよりは「ICO」に雰囲気が近いなと思って見た。
ただ、個人的にジブリの一番の魅力だと思っている「世界観」の描写には物足りなさを感じてしまって、とにかく全体的にさみしいという印象を拭えなかった。それから生と死にまつわる問答があちこちで出てくるんだけど、この辺も、使い古されてしまったおとぎ話にしか聞こえない。もっと切実さを演出してほしいところだった。
それでも「良い」と思ったのは、まずはやはりジブリのアニメーションの魅力だと思う。特にナウシカを彷佛とさせる砂漠の場面にはぐっときたし、アレンの無気力っぷりの徹底や、生きる意味とかそういうことに対して無責任な楽観を見せないところにも好感をもった。

ジブリの魔法を感じさせる作品ではなかったけれど、一度ここまでシンプルな作品を作るっていうのも自浄作用になっていいのではないかと思う(えらそうですが)。もう「劇場アニメで成功するのはジブリだけ」な状況ではなくなりつつあるし、個人的にはジブリのアニメーションで、もっといろんな(監督の)作品が見たい。宮崎駿さんにも飛行機がたくさん飛ぶ映画撮って欲しい。もう、そう流れていい頃合いなんじゃないかな、と希望込みで、思います。
ゲド戦記」の方は、もう一度ちゃんど原作を読み返そうと思う。