古い女/こうの史代

わしズム」最新号に掲載されている、こうの史代さんの短編を読んだ。
「底意地の悪い話」と聞いていたので、少しは覚悟して読んだんだけど、これがまた、強烈な作品だった。

作品は6ページのカラーで、ある女性の「チラシの裏*1独白によって綴られている。彼女がなぜ「古い女」なのか、そして彼女の待っているものは何なのか。そこを追うだけでも緊迫感があり、読み終えた瞬間、捲ったページの少なさに驚いてしまうくらいの濃密さだった。
主人公の女性の独白を、強烈な皮肉と読むこともできるし、これを読んだ後では、あの「長い道」すら、皮肉だったのではないかと思える。
この女性の思いに、暗がりでそっと刃物を構えているかのような、恐ろしさを感じる人も、特に男性には多いのではないかと思う。ただ、例えば「女が本を読むなんて」などという言葉を投げかけられることは、今でもやっぱりあるわけで、それはいつか終わるのか、もしかしたら既に「古い」と切り捨てられることなのか、それとも終わることなんてないのかわからないけれど、「なぜなのか」というところに、理由はあるのだろうか、あるのだとしたら、それは何か、社会の決めた役割でしょうかと、問いかけているようにも感じられた。
これが否定でも肯定でも、ましてや恨み言でもないということは、こうの史代さんのこれまでの作品を読めばわかることだろう。ここにあるのは、人も社会も、見え方によってこんなにも違うという、ひとつの角度であり、その見せ方において、こうのさんは素晴らしくうまい。

とりあえず立ち読みだけして帰ってきてしまったのだけど、かなりずっしりと余韻を残す作品だったので、やっぱり買おうかなと思う。「わしズム」を読んだこともないし。

*1:ぜひ実物を見て下さい